第五章
[8]前話
女の子はその彼と手を握り合って仲良く雷門を後にした、その一部始終を見てだった。左千夫は真矢にこう言った。
「ええ娘やな」
「ほんまにな」
「あんなええ娘大阪にも滅多におらんわ」
「そやな」
真矢もこう応える。
「ちょっとな」
「おらんわ」
「東京にもああいう娘おるんやな」
「ちょっと見直したわ」
「見直したんかいな」
「そや」
その通りだとだ、左千夫は真矢に応えた。
「ほんまにな」
「そやな、飯はまずいし人情もない街やと思てたけど」
「ええとこもあるな」
「そやな。ああいう娘もおるんやな」
「ここも捨てた街やないわ」
「案外な」
こう二人で話す、そして。
左千夫は真矢にだ、ここでこうしたことを言ったのだった。
「何か食うてくか?」
「何を食うんや」
「もんじゃでもな」
こう切り出したのだった。
「食うか」
「おいおい、もんじゃかいな」
「それ食うてくか?」
「もんじゃなんか食えるかって言うてたやろが」
「気まぐれでや」
そう思ったとだ、笑って返した左千夫だった。
「そう思ったけどどないや」
「そうか、じゃあわしもな」
「気まぐれでか」
「もんじゃ食いたなったわ」
明るく笑って真矢も言った。
「ほな一緒に行こか」
「口に合う合わん別にな」
「食おうか」
こう二人で話してもんじゃ焼きの店に入った、そしてそのもんじゃを食べて左千夫は真矢にここではこう言った。
「まあええわ」
「そやな」
「何かそんな気持ちやしな」
「わしもや」
「今日は許したる」
「もんじゃでもな」
普段は心から馬鹿にしていてもというのだ、大阪人として。
「今日ばかりは」
「ええやろ」
「それやったらな」
「今日は食うか」
「一枚でもな」
「そうしよか」
二人で笑ってもんじゃを食べてまた雷門の前を通って帰った。その雷門を見て二人共温かい目を細めたのだった。
雷門にて 完
2015・1・19
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