第四章
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「ねえ、あの人って」
「そうよね、ダーク博士よね」
「安曇谷孝夫さん?」
「サイン貰えるかな」
「握手位はしてくれるんじゃ」
こう話しているのが聞こえてきた、そして。
女子高生達は実際に彼のところに来てだ、こう言ってきた。
「あのよかったら」
「サイン貰えます?」
「握手してくれます?」
「色紙ないですけれど」
「よかったら手帳に」
「うん、いいよ」
あっさりとだ、安曇谷は女子高生達に気さくに応えた。彼は何時でも誰でもサインや握手には応える主義なのだ。
「じゃあね」
「はい、お願いします」
「それじゃあ」
女子高生達は彼の笑顔での返事ににこりとなった。そしてだった。
彼にだ、あらためてこう言った。
「ダーク博士って書いて下さい」
「サインに」
「ダーク博士ってかい?」
「はい、あの博士大好きなので」
「物真似で見てから大好きになりました」
その時にというのだ。
「ヘンリー時田さんの」
「あの物真似見てから」
「ああ、あの物真似からなんだ」
内心嫌に思いながらだ、安曇谷は少女達に応えた。その感情は隠して。
「そうなんだ」
「はい、そうです」
「それでビデオで実際のダーク博士観たんですけれど」
「そっくりでしたし」
その頃の安曇谷と今の時田が、というのだ。
「極悪非道ですけれど格好よくて」
「無茶苦茶ダンディですよね」
「ですからそれで」
「好きになりまして」
それで、というのだ。
「安曇谷さんご自身も」
「ご本人も格好いいですね」
「あの役からなんだ」
安曇谷は少女達の言葉を聞いて言った。
「僕のことを知ったんだね、君達は」
「前からお名前は知ってましたし」
「ドラマでも拝見させてもらっていました」
「けれどやっぱり」
「時田さんの物真似からですね」
まさにだ、彼からだというのだ。
「安曇谷さんのことをよく知ったのは」
「やっぱり」
「時田さんの物真似面白いですし」
「記憶に凄く残るんです」
「成程ね」
ここまで聞いてだ、安曇谷は考える顔になった。だがこの時はそれは一瞬でだ。女子高生達と少し笑顔で話してだった。
彼女達に手を振って笑顔で別れてだ、それからだった。
都にだ、こう言ったのだった。
「僕が若い子達に知られる様になったのは」
「そうかも知れないですね」
都も安曇谷に真剣に考えている顔で返した。
「時田さんの物真似のお陰で」
「ダーク大佐にしてもね」
「あの役は確かに出世作ですけれど」
安曇谷とってだ、それは他ならなかった。
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