第一章
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ポイイェーラ
ペルーは国全体が高原地帯にあると言っていい、このことはインカ帝国の頃から変わらない。
首都であるリマもそうだ、その地でガイドをしているファン=チトは度々仕事相手の観光客達にこう言っていた。
「高い場所にある町や村が多いですからね」
「寒さと空気の薄さにはですね」
「そこは注意しておいて下さいよ」
こう言うのを忘れなかった
「くれぐれも」
「そうですか、じゃあ」
「そのことに注意して」
「旅行楽しませてもらいます」
客達もいつもこう返していた、彼はペルー生まれで仕事なので慣れているがだ。
客はそうではない、だから気をつけていた。
しかしだ、ある日のことだった。
日本から来た観光客のだ、明坂明日香という向こうでOLをしているという若い女性がチバイ村に行きたいと言ってだ、彼は呆れて返した。
「あの村にですか」
「行きたいんですけれど」
「あそこ高いですよ」
明日香がスペイン語を喋ることが出来るので彼もスペイン語で返した。彼はスペイン語以外には英語が出来る。
「お金じゃなくて」
「標高がですね」
「ご存知なんですね」
「ここに来る前に調べてきました」
そのやや四角い感じの顔で目の下に泣き黒子がある顔出の言葉だ。黒髪を伸ばして後ろで束ねている。背は一五八位ですらりとしている。服は青いシャツと黒いスラックスに靴という動きやすい格好をしている。
「ペルーに」
「それであの村のこともですか」
「知ってます、コンドルが多いらしいですね」
「はい、それで有名な村です」
オフィスで明日香に話した。
「あそこは」
「それで今回はです」
「あの村に行こうとですか」
「思いまして」
それでというのだ。
「もうナスカの地上絵とかマチュピチュは観ていまして」
「ああ、そうした場所はですか」
「行っていまして」
「じゃあペルーでの旅行はもう慣れてるんですね」
「三度目です」
「それは結構ですね、それでスペイン語も」
「学校がスペイン語学科だったので」
通っていた大学の学科はというのだ。
「それにスペイン関係のお仕事なので」
「道理でスペイン語が流暢な筈だ」
ファンはこう言って納得した、その浅黒いインディオの顔立ちに口髭を生やした顔でだ。背は一七〇位で痩せていて癖のある黒髪を短く刈っている。
「それで私ともですね」
「こうしてお話出来ます」
「成程、ではガイドの必要はないのでは」
「いえ、チバイ村に行くのは最初で」
それにと返す明日香だった。
「しかもボディーガードも欲しいので」
「旅行は慎重にですね」
「何かあっては楽しい旅行が台無しですから」
「そうですか、まあボディーガードも仕事のうちですから」
ガイド
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