第二百十五話 母子の和その五
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「これがわしの考えじゃ」
「それもいいですね」
「美味いものを限られた者だけ食ってもよくない」
「それではですね」
「誰もが食ってこそよい」
これが信長の考えだ。
「だからな」
「こうした菓子もですね」
「砂糖を広めてな」
「作るのですね」
「そう考えておる」
「それがよいですね」
「少なくとも砂糖は手に入れたい」
多くというのだ。
「砂糖が作れる様になるまでは」
「貿易ですか」
「琉球では砂糖が多く採れるという」
「では琉球との貿易をさらに深くし」
「それで手に入れたい」
「そしてその貿易は」
「織田家が全てする」
既に明や南蛮との貿易は織田家が全てすることに定められている、貿易の利益から力を得て他大名に余計な力を備えて謀反を起こさせない為だ。
「そして砂糖貿易もだ」
「それもですね」
「広くしたい」
「それでは」
「そうすれば菓子もな」
今食べているそれもだった。
「よく食える様になる、あとは」
「あとは」
「蜜じゃな」
それもだった。
「よく食べられる様にしたいのう」
「あちらもですか」
「わしは酒は駄目じゃ」
だから今も飲んでいない、とかく信長は酒には縁がない。
しかしだ、それでも甘いものは好きだからそのこともあって言うのだ。
「しかし甘いものを誰もが食える様になればと思う」
「上様は甘いものがお好きですから」
「だからな」
それで、というのだ。
「砂糖と蜜もな」
「天下に広めますか」
「そこから商いも生じ銭も動く」
「だからこそ」
「そうしたい」
こう言いつつだ、信長は菓子を一切れ手に取ってそうしてからこうも言った。
「御主も食え」
「宜しいのですね」
「うむ」
微笑んでの言葉だった。
「美味いものは一人で食っても美味くない」
「いつもそう仰っていますね」
「今もじゃ」
それは、というのだ。
「だからじゃ」
「それでは」
帰蝶は微笑み信長のその言葉を受けてだった、そうして。
その菓子を受け取って食べた、そうしてこう言った。
「美味しいです」
「そうじゃな」
「柔らかいですし」
「しかも甘い」
「饅頭の生地に似ていますが」
「また違った美味さじゃな」
それがこの南蛮菓子の味だというのだ。
「よい味じゃ」
「左様ですね」
帰蝶も笑顔で応える。
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