第二百十五話 母子の和その四
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「手を打っていくが」
「そうされますか」
「やはり容易ではない、しかし」
「それでも」
「仲直りはしてもらう」
それは絶対にというのだ。
「それでわしが考えておるのは」
「どういったものでしょうか」
「梵天の母の方をな」
彼女をというのだ。
「ここはな」
「主にですか」
「動かしたい」
これが信長の考えだった。
「そう考えておるが」
「そうなのですか」
「うむ、とはいっても骨が折れることは確かじゃ」
「左様ですね」
「伊達兄弟の確執はまだ続いておるしな」
「では政宗殿とお母上だけでなく」
ここで帰蝶はこう信長に言った。
「その弟殿、それに伊達の主な家臣の方々も」
「この安土にか」
「呼ばれてはどうでしょうか」
「そうじゃな、あの母子の対立はな」
「政宗殿と弟殿のこともありますね」
「うむ、弟ばかり可愛がることもあってな」
それは事実として語る信長だった。
「それでじゃからな」
「では」
「そうじゃな、それでは」
信長は帰蝶の言葉に頷いてそのうえで彼女の言う通りにすることにした、そのことを決めてからさらにだった。
帰蝶にだ、こうも言った。
「兄弟の間は決してじゃ」
「悪くないのですね」
「うむ、むしろじゃ」
「仲がよいのですか」
「あの兄弟はな」
「ではよいですね」
「これはよいことじゃ」
兄弟仲のいいこと、伊達家についてもそうだというのだ。
「ならばな」
「そこからですね」
「そうなるな、ではな」
ここまで話してだ、こうも言った信長だった。
「菓子はあるか」
「南蛮のものが」
「南蛮のか」
「麦を焼いた」
「あの柔らかい菓子じゃな」
「如何でしょうか」
「ふむ、貰おう」
南蛮菓子と聞いてだ、笑顔で応えた信長だった。そして実際にその菓子が持って来られたのを食べてからこう言った。
「美味いのう」
「お気に召されましたか」
「これはよい」
見れば信長はその顔をほころばさせていた、そのうえでその菓子をさらに食べるのだった。
そしてだ、信長はこうも言った。
「砂糖を入れておるが」
「はい、その砂糖を」
「本朝でもな」
「より多くですね」
「作ってな」
「誰もが食べられる様に」
「そうしたい」
是非にという言葉だった。
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