巻ノ三 由利鎌之助その十一
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「忍術と剣術に秀でていまして特に剣の腕は天下無双」
「そこまで凄いのか」
「百度の果し合いで負けを知りませぬ」
「そこまで凄いのか」
「この者、戦国の世にありながら律儀で融通が利かず」
それで、というのだ。
「これまで確かな主を見付けられませんでした」
「この戦国の世で義を通していたのか」
「はい、ですから誰にも仕えず岐阜で道場を開き剣を教えています」
「では岐阜に行けばか」
「その者に会えるかと」
「わかった、では岐阜に向かう」
まさにその国にというのだった、幸村も。
「そしてそこでその根津甚八という者に会おう」
「さすれば」
「では皆の者よいな」
幸村はあらためて自分の家臣達に告げた。
「我等はこれより岐阜に向かうぞ」
「はい、それでは」
「これより」
穴山と由利も応えた、そしてだった。
一行は木曽の山から岐阜に向かうことにした、木曽その山道を進むが。
海野は幸村にだ、微笑み言った。
「水のことならお任せ下さい」
「そなたは水練を極めておるそうじゃな」
「はい、水の術も」
それもとだ、海野は右手を拳にして幸村に答えた。
「そして水を見付ける方法も」
「知っておるか」
「例えばこの山の中ですが」
「ここでか」
「水を見付けることが出来ます」
「そうなのか」
「穴を掘りその上に布を敷けばその布に水が付くのです」
このことをだ、海野は幸村に話すのだった。
「いざという時はそうして水を手に入れ飲めばいいのです」
「それは面白いのう」
「水に関することで知らぬことはありませぬ」
海野はこうまで言った。
「ですから何かあればお任せ下さい」
「そうさせてもらうぞ」
「それがしは河童です」
自分のことをだ、海野は笑ってこう言った。
「水はそれがしの世界です」
「ふむ、河童か」
「では手が伸びたりするのか」
穴山と由利は海野の話を聞いてこんなことを言った。
「だと余計に凄いは」
「流石にそれはないな」
「いや、関節を外すことは得意じゃ」
海野はこう言って実際に左手の関節を外してみせた、するとその手が伸びた。
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