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真田十勇士
巻ノ三 由利鎌之助その九
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「わしは修行中じゃが」
「ふむ、泳いでか」
「修行をしておったか」
「そうじゃ」
 その通りだとだ、男は穴山と由利に答えた。
「そうしておったが」
「左様か、やはりな」
「道理で身体が濡れておる筈じゃ」
「水練の修行か」
「それに励んでおったか」
「水練は大好きじゃ、他の術と同じくな」
 男は淡々として答えた。
「励んでおるがな。やはり水練に一番時を割いておる」
「左様でござるか。ところで見たところ」
 幸村は二人に話す男にだ、礼儀正しく答えた。
「貴殿は九州の方か」
「わかるか」
「その言葉の調子で」 
 喋り方は幸村と変わりない、しかしというのだ。
「それも南の方か」
「よくわかるのう」
「言葉の調子で。上田にもそこからの方が来られたことがありますので」
「貴殿は上田の者か」
「はい、上田に生まれ育っておりまする」
「武士と見受けるが真田家に仕えておられるか」
 男はその目を鋭くさせて幸村に問うた、その丸い目を。
「そうであろうか」
「いや、この方こそじゃ」
「真田家の方か」
 穴山と由利が男に答えた。
「真田家の次男真田幸村様」
「まさにその方じゃ」
「何と、あの若いながらも武芸十八般を極めた智勇顕微の方か」
「うむ、非常に立派な方じゃ」
「だから我等もお仕えしておるのじゃ」
「わしは穴山小助」
「わしは由利鎌之助じゃ」
 二人はここで男に胸を張って自分達の名前も名乗った。
「共に幸村様にお仕えしておる」
「そして人を探す旅のお供をしておるのじゃ」
「御主達の名は聞いておった」
 男は二人にも応えた。
「天下無双の豪傑だとな」
「鉄砲と金の術では負けぬ」
「天下一の鎖鎌と風の使い手じゃ」
 二人は笑ってまた男に言った。
「御主も相当な者の様じゃが」
「わし等も強いぞ」
「そうじゃな、気でわかるわ」
 男は二人ににやりと笑って応えた。
「そのこともな」
「そうか、それは何より」
「御主もそれがわかるのならな」
「それならな」
「話をしたいのじゃが」
「実は拙者は家の為に天下の豪傑を探していて」
 幸村が男に話した。
「それでこの山にも入りましたが」
「ではそれがしが天下の豪傑なら」
「若し当家に仕えて頂くなら」
「いや、滅相もない」
 男はここでだ、幸村に仰天した様にして言った。
「真田幸村様から直々のお誘いとは」
「では、か」
「御主もか」
「それがし仕えるべき主はいないと見て世を捨て己の術のみを極めんと日々鍛錬に励むだけの日々であったが」
 それがというのだ。
「しかしここで仕えるべき主に会えました」
「それが拙者だと言われるか」
「いい目をしておられます」
 幸村のその目を見ての言葉だった。
「人は目に全てが
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