1部分:第一章
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り次第だ」
フランス人はこうも思われていたのだ。余談だがナポリである病気にかかりそれを瞬く間に欧州中どころか世界にまで広めさせてしまった実績もある。
「俺達はちゃんと選ぶぜ」
「酒も食い物もな」
「そういうことさ。で、フランス王はどうだったんだ?」
「金払いはよかったな」
それは保障するのだった。
「もっともそのせいであの国はまた金がなくなったがな」
「いいんじゃないのか?その分俺達の懐に入ったからな」
「それもそうか。じゃあ今度は」
「教皇様と皇帝陛下だな」
「そういうことだな。それにしてもだよ」
ジュリアーノは飲みながら皮肉な笑みを見せた。そのうえでロレンツォに語る。
「どっちもよくやるよ。毎回毎回」
「教皇様ってあれなんだろ?」
ロレンツォもそれに応えてシニカルに笑ってみせて述べる。
「神の代理人だったよな」
「一応はそうなってるな」
「一応は、か」
「じゃああの人は何に見えるんだよ、お宅は」
「そういう貴殿はどうだい?」
ロレンツォはそっくりそのままの言葉でジュリアーノに返す。
「何に見えるんだ、あの人はよ」
「どう見たって聖職者じゃないだろ」
これはジュリアーノだけでなくイタリアの殆どの人間が思っていることだった。当時のローマ教皇といえば神の代理人というよりはそれこそ政治家だったのだ。
「あれだけ強欲な聖職者がいるかね。わし等よりも欲の皮が突っ張っててな」
「わし等よりもか」
「酒に女に御馳走に宮殿」
権力者で腐敗した部類の者が必ず求めるものである。
「権力や財産だけに飽き足らず。よくやるよ」
「しかもそれで満足しないしな」
ロレンツォも言い加える。
「あまつさえこのイタリアとドイツが欲しくて」
「ああ」
「皇帝陛下と戦争だ。皇帝が月で教皇が太陽だったな」
「そういえば今だに言ってるな」
ジュリアーノはふとこの言葉を思い出した。
「何百年も昔の言葉をな」
「世俗のことには関わらない筈だがな、バチカンは」
「そんなのは忘れたんだろう」
「忘れたのか」
「都合のいいことだけ覚えていてそれ以外は忘れる」
ジュリアーノは少し真顔で述べてみせた。
「そういうものだろ?司祭様にしろな」
「貴族よりタチが悪いな」
この時代では常識のことだ。日本では延暦寺がその腐敗を織田信長に憎まれたがバチカンの腐敗はその延暦寺の僧侶達が聞いたらそれこそ腰を抜かして念仏を唱える程であった。バチカンの腐敗はそこまで酷くそこには多くの犠牲さえあったのだ。バチカンの為の犠牲が。
「まあ、今回も稼がせてもらうか」
ロレンツォはこれでとりあえずいいのだった。それはジュリアーノも同じだ。
「お互いな」
「ああ。じゃあ仕事はいつも通りだな」
「そう、いつも通りだよ」
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