第4章
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コウジが目を覚ましたのは、翌日の夕方だった。宗一から連絡受けた龍太郎は搬送された病院に向かい、包帯が巻かれる首を見た。
「抜糸は十日後で、退院は様子見て、大体そうね、メンタルケアも入れて一ヶ月後かな。もっかい自殺されたら堪まらんから、一応監視は付けてる。」
しませんよ、と笑うコウジに龍太郎も釣られて笑った。開けた窓から、秋の匂いがし、クリーム色のカーテンが揺らいだ。サイレンの音や車の音、人の笑い声も聞こえる。色々な思いがコウジの中で溢れ、其の思いを噛み締めるように雲を追った。
「空って、綺麗ですね。」
「そうですね。」
「変な情は、要りませんから。」
コウジの容疑は殺人幇助で、木島が云ったように情状酌量の余地はある、長年受けたセイジからの恐怖にコウジは動いたに過ぎない。実際取り調べの時も、涼子への殺意を否定している。然しコウジは、結果的に二人も殺害したので執行猶予は要らないと、龍太郎と宗一の目を見た。
「其方の先生が仰られたように、私は、きちんと二人に向き合わなければならないんです。十年近く逃げました、もう、逃げません。きな粉にも、申し訳無いですし。私が実刑になれば、兄の刑も重くなるでしょう。」
「其の事なんですが、タキガワさん。」
「はい。」
「きな粉は、此の後、如何したら良いでしょうか。里親は、探しますが…」
猫の事もあり、コウジを執行猶予にしたいのだが、本人が弁護士は付けない、実刑を望むと言い切っている、そうなると猫の所有者が居なくなり、里親が見付からない場合、保健所に搬送される。コウジにも其れは判っているが、雪村凛太朗の人生を奪った事を思うと、矢張り実刑にして欲しかった。
「私は何処迄も自分勝手ですね。」
最悪、猫の処分が決まったら、一課で飼おう、と課長は云っている。加納は乗り気だが、動物嫌いの井上や猫アレルギーの刑事から猛攻受けている。そんなに乗り気なら加納さんが引き取れよ、と全員に云われたが、加納には加納で事情があるらしく、引き取る事は出来ないと云った。
科捜研側にも声を掛けたが、八雲には此れ以上は無理、と云われ、時一は犬派なので、侑徒は自分の面倒で一杯一杯、秀一は何で俺が、と全員に無視された。困った課長は、結局宗一に縋ったが、宗一も宗一で過剰な拒絶をした。課長が引き取れるなら引き取るが、困った事にパートナーが重度の猫アレルギーなのである、大型犬も二頭居る。
一週間は署で管理する事にしたが、一週間で飼い主が見付かるだろうか、不安である。
又来ます、と病院から其の儘署に戻り、部屋に入った龍太郎は、アレ、と見渡した。猫が居る筈なのに井上の態度が普通なのである。加納が署に連れて来た時、関わらないように部屋の端迄、アレルギー持ちの刑事と逃げた程なのに、普通に自分の席で仕事をしていた。
「きな粉は。」
「嗚呼、あれなら木
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