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猫の憂鬱
第4章
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島が持って帰ったぞ。」
「え?」
猫に対し一番無関心だった木島が真っ先に動いた、其れに龍太郎は驚いた。
「そう、なんですか?」
「妹が欲しいって云ったらしいんだ。」
「嗚呼、成る程。」
木島には妹が居る、盲愛に盲愛を重ね、妹の望む事を全てする馬鹿兄貴である。猫を持ち帰ったのとて、猫に同情した訳でも、猫が好きだからでも無い、溺愛する妹が欲したから持ち帰ったに過ぎない、そんな気の持ち前で飼育出来るのか不安だが、猫も引き篭もりの人間も変わらん、と木島は言い放った。
機嫌が悪いのは加納である、そんな引き篭もりに猫の面倒なんか見られるもんか、自分の面倒を先ずに見ろ、と怒っている。加納の言う事も一理あるが、引き篭もりだからこそ猫一匹位与えた方が良いのでは、と龍太郎は思う。
私用電話が響く、見ると木島からであった。
「何か。」
「猫って、何食べるんだ。」
其処からか、と龍太郎の顔から表情が消えた。
「コンビニに御飯売ってますよ。」
「そうなの、じゃあ御前買って来てよ。」
「何で私が。貴方が行けば良いじゃないですか。」
「今忙しいんだよ。」
こら、駄目、飛ぶな、と電話から聞こえ、棚から何か落ちたのか、騒音に耳を押さえた。
「…行って来ます…」
序で本屋に寄って猫の飼い方たる本でも買おう。
うんざりした気持ちで本屋とコンビニに行き、木島のマンションに着いた龍太郎は木島の電話を鳴らした。
木島が龍太郎に頼んだのは理由がある、木島の自宅を知っているのが課長と龍太郎だけで、流石の木島も猫の食事を頼むのに課長は使えない。其れで仕方無く、渋々、嫌々、木島の自宅に来た。
思うが木島、龍太郎に頼まずとも、自宅に出入りする恋人に頼めば良かったのでは無いか、エントランスに現れた木島にそう云うと、ビニール袋を片手に本を捲る木島は、そうだよな、と失笑した。
「そうか雪子、考え付かなかった。」
「付き合ってるんですよね?」
「そうだな、完全に忘れてた。」
だから御前は結婚出来ないんだよ、と龍太郎は無言で見返し、頭を下げ、帰ろうとしたのだが、上がる?と素っ頓狂な事を云った。上がれるのなら態々木島をエントランスに呼び出さない、其の儘自宅に行く。
木島を態々マンションエントランスに呼び出したのは、妹が理由である。木島以外の男を見るとパニック起こし、錯乱するのだ。
其れをコンビ時代から知っているので、緊急で迎えに行っても車の中で待ち、用事があっても必ず木島をエントランスに呼んだ。何を考えてるんだと無言で見返し、帰ります、と踵を返した。
自宅に戻った木島は、玄関先で猫を抱く妹の頭を撫でた。
「お兄様。」
「んー?」
キッチンで猫の食事を用意する木島は、無言で自分を見る妹には向かなかった。腕に抱かれる猫に食事の匂いを教え、妹の足元に食器を置いた。其の
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