Episode38:終幕
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風が吹く。月光とネオンが照らすこの街の中で、まるで時が止まったかのように、意識が凍り付いた。
「な、にを…!」
「覚えて、いるだろう? 四月。貴様、を狙って、きた無頭竜、の、五十嵐修哉という、男を」
忘れる筈もない。
妹を人質にされ、最後には目の前で殺された哀れな男。そして、俺が引導を渡した男。その時に約束したのだ。彼の妹の仇たる無頭竜は、この俺が潰すと。
「五十嵐修哉の妹は、無頭竜によって殺害されたはずだ…!」
「クク……五十嵐にとっては、そうなんだろう、な。だが、真実は、違う」
紫道がエリナの隣に立つ。病的なまでに白い指が彼女の頤を撫でた。
「五十嵐修哉という、男が見たのは、ただの幻想、邪眼に記憶を、弄られていた、だけに過ぎない」
「…じゃあ、五十嵐は……!」
「いいように、無頭竜に使われて、いただけ、だな。哀れな、男だ」
吐き気がした。
騙し、己が野望の為だけに人を利用するその存在に、どうしようもない程の殺意を覚える。
俺の抱く歪な正義感が、許さないと喚き散らす。
「エリナ、は五十嵐修哉が、あの、事件を起こす、遥か前に、無頭竜に拉致され、我々の組織に、引き渡されて、いた」
「お前らの…組織………?」
「気づいて、いるのだろう?俺が、 十字の道化師……いや、その裏にいる、八色の教団の、メンバーだと」
「……イタリア語…? お前らはマフィアの組織だったのか…」
やはり、目の前の男はかつて雫とほのかを拉致した『緑川佐奈』や、あの少年の仲間のようだ。十字の道化師に後ろ盾があることもある程度は予想できていた。
八色の教団。
聞いたこともない組織だが、決して単独で相手取ることのできる集団ではないのだと断言できる。
「クク……組織と、して行動するのに、マフィア、という、体裁の方が、諸々の都合に、よかった、だけだ」
そう言って、紫道はエリナの顎を持ち上げた。
「この光景、懐か、しいなぁ。昔にも、あった。そういえば、空虚たる、お前は、エリナにだけ、心を開いて、いたな」
「……なにを…」
何を言っている。
何故、お前が知ったような口をきく。
俺はお前の言う昔を知らない。それは俺じゃない。
「俺、が、言葉をうまく、発せなくなった、のは、エリナに手を出し怒った、お前に、喉をやられたから、なんだぜ」
やめろ。
頭が割れるように痛い。
これ以上、俺の知らない記憶を流し込むのはやめてくれ。
俺は他の誰でも
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