Episode38:終幕
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「クク……
?????お前の、後ろだ」
「っ!」
唐突な殺気。感知が遅れた訳ではない。真に、その人物は下の地面から這い出てきたのだ。
体を投げ出す。一片の躊躇もなく突き込まれたナイフを躱し、すぐ様起き上がる。
「ほら、こっち、だ」
「ぐっ…!」
先回りされていた。
体を起こした直後、紫道の鋭い蹴りが体を穿った。
なんとか腕のガードが間に合ったものの、あれが直撃していれば間違いなくこの意識は吹き飛んでいただろう。
だが、息を吐く暇はない。
ナイフを片手に、正面から襲いかかってきた少女の蹴りを躱す。
先日と変わらず少女の攻撃に迷いはない。油断すれば、たちまちあのナイフに喉を掻き切られるだろう。
「っ、エリナ……!」
黒く塗りつぶされた彼女の瞳を見る度に胸の内が掻き毟られるようなざわつきを覚える。だがそれに気を取られている訳にもいかない。
狐面の頬を走るナイフを掴み、エリナの手から抜き取る。
そのままガラ空きの腹部へ蹴りを放とうとして、留まる。
「何を、迷う?」
追撃を躊躇った刹那、空間を越えてきた紫道の拳が頬を穿った。衝撃に耐え切れず、面の右頬が砕け散る。
「ぐぁ…っ!」
今度は間違いなく見えた。
奴は、空間を跨いでこちらの懐に入り込んできた。
『空間跳躍』。仮に奴の能力をそう名付けよう。ならば、奴との間に間合いなんて概念は霧散してしまう。奴にとって、10メートルの距離も、100メートルの距離も変わらないのだから。
「?????っ!」
激しい目眩がして、倒れそうになるのをなんとか踏み止まる。そうだ、ここで倒れれば全てが終わってしまう。それだけは駄目だ。
今ここで、エリナを連れ戻す。
「????っは、!」
「ほう…よく、耐えた、な」
余裕だからだろうか。それとも何か別の理由があるのだろうか。
紫道は愚か、エリナでさえもこちらへの追撃の手を止めた。
「……なんのつもりだ…?」
「クク……、ここ、まで、耐え抜いた、報酬を、くれてやろうと、思って、な」
身構えるこちらに対し、奴は凶悪な笑みを浮かるのみだ。
この男は人の心を惑わすのに長けている。相応の覚悟を持っていなければ、必ず付け込まれてしまう。
一つ真実を教えてやろう、と嘯いた紫道に、俺は身を硬くすることしかできなかった。
「お前が、助けようとしている、九十田、エリナ……いや、『五十嵐』エリナにとってお前は????」
目を見開く。
呼吸がうまくできなくなって、信じられないと喘ぐ。
だって、その名は?????
「?????愛しい、兄を殺した、憎い仇なんだよ」
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