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魔法科高校の神童生
Episode38:終幕
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日常に、波風を立てる訳にはいかなかった。

「ぐ…ごほっ、ごほっ…!」

 何時の間にか、どうやら試合は終わっていたようだ。
 最初は小さく、けれど、段々と大きくなっていった拍手は、今や万雷の喝采にも等しい。

 そんな中で立っているのは一高の四人。達也が将輝を、幹比古が吉祥寺を、レオが残る一人を倒したのだ。

「まぁ…結果としては、上々、かな…?」

 次第に薄れ行く意識に苦笑いを漏らして、力が入らなくなった体をそのまま勢いに任せようと脱力すると、ふとなにかに支えられた。

「よ、頑張ったじゃねえか隼人」

「…レオか。うん、ありがとう……そっちも、大変だったみたいだね」

「まあな、けどお前さん程じゃないさ。おら、今は寝てもいいぜ。医務室に運んどいてやるからよ」

「ん、はは。よろ…しく」

 レオにのし掛かるように脱力して、ゆっくりと、この意識は闇に落ちていった。



☆★☆★



 夜。鈴音は一高天幕に残り、これまでの成績を纏めていた。
 新人戦モノリス・コードは、途中アクシデントに見舞われたものの、見事第一高校が優勝を飾り、そして新人戦自体の優勝も第一高校に決定した。
 その報せを受けて、一番安堵したのは作戦参謀としてこの九校戦に参加していた鈴音であった。
 意識を失ってレオに背負われている隼人以外の三人は多少怪我を負っているようだが、足取りもきちんとしていたし、問題はないだろう。

「あ、リンちゃん」

「どうしました?」

 内心の安堵を悟られぬよう再び書類へ目を落としていた鈴音の元に、外へ空気を吸いに行っていた笑顔の真由美が現れた。なんとなく、これまでの経験から厄介な事になる気がした。

「お疲れ様。この後、時間はあるかしら?」

「……ええ。本日中にやるべきことは全て終わっているので」

 嫌な予感を感じつつも、鈴音は真由美を拒絶することはない。ある程度ならば適当に流すことができるし、逆に拒絶した方が帰って面倒になる可能性もあるからだ。

「じゃあさ、これから隼人くんのお見舞いに行かない?」

「………!」

 思わず、体がピクリと反応してしまった。
 余りにも不意打ちなお誘いに、しかし鈴音は持ち前のポーカーフェイスでその感情を押し込める。

「昼間の戦いで彼、結構重症だったみたいなのよね。リンちゃんってば何かと隼人くんの事を気にかけてるし、一緒にお見舞いに行くのはどうかなーって思ったんだけど」

 真由美の言わんとしている事は理解できた。いつもの悪巧みとは違い、今度は純粋に後輩を心配しているだけのようだ。

 ならば、これに乗らない手はない。
 元より、あの危なっかしい後輩には一言文句を言っておきたかったのだ。


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