Episode38:終幕
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、奴の体が空間に溶け込んでいくのを視た。
直感が叫ぶ。
軋む体に鞭を打ち、すぐ様その場から飛び退こうと力を込めて。
「ぐっ…ぁ…!」
容赦のない一撃が、この身を背後から突き飛ばす。最早受け身をとる余裕すらない。無様に硬い地面を転がり、しかし倒れまいと最後の意地が体を起こす。
「シッ!」
「っ!」
正面に現れた奴の拳を咄嗟にクロスガードで受ける。尋常ではない風の重みを、硬化魔法で腕の細胞全てを固定するという荒技でなんとか受け切って、しかし既にヤツの存在は己の射程の外。
どういう原理かは分からないが、どうやらヤツは空間を自由に行き来できるのかもしれない。
ゆらりと、影のような不確実な存在となって紫道が動く。その姿はイデアを視るこの眼を持ってしても不鮮明に映り、こちらの反応を鈍らせる。
前後左右上下。空間を四次元的に行き来するヤツの拳を紙一重で避ける。
掠る程度なら無視して構わない。打ち落とすべきは致命傷となり得る一撃のみ?????
?????否。
「あッ、ガッ…!」
このままヤツの拳戟をやり過ごしているだけならば、こちらが何れ崩れ落ちるのは明白。
ならば捨て身。
鳩尾に凄まじい一撃を受けて、一瞬だけ意識が飛ぶ。
それでも。例えこの意識が千切れようと、恐らく、左手は絶対に逃すまいとヤツの拳を握っただろう。
「キ、サマッ…!」
「うおおおおおおおッ!」
吼える。吠える。咆える。
かつてない程の咆哮に呼応するが如く、この身に纏う雷は天を焼く程に勢いを増す。
「ぐ、おっ…ぉぉおお!」
「?????終わりだ!」
掲げた右手には雷が宿り、それを振り下ろした刹那。
天を焦がし、地を裂く雷撃がステージに轟いた。
☆★☆★
熱く熱く盛り上がった演劇ほど、幕切れは呆気なく。
あれ程の猛攻を繰り返していたヤツは、たった一撃、しかし最大の雷撃を浴びて、その身を地に伏せた。
「くっ…ぁ…は、ぁ……はぁ…」
肋骨が折られて肺がやられたか。今になって痛みと息苦しさが襲ってくる。
だが、その苦しさに屈するのはもう少し先だ。
「…っ、さあ……答えて、もらおうか」
時折掠れる意識を懸命に繋ぎ止めて、眼下で仰向けに倒れる紫道に問い掛ける。
ヤツとのゲームは俺の勝ちだ。ならば、報酬を貰わねば。
「……仕方、あるまい……あ、すだ。深夜、横浜に、ある…無頭竜の、アジトへ来る、がいい。そこ、で全ての、決着をつけよう」
「……分かった」
衆人の目があるこの場所で、この男を殺すことはできない。
今は『九十九』ではなく『隼人』なのだ。この
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