4部分:第四章
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」
「そうです。太師の望みは何ですかな?」
「天下に覇を唱えること」
その目に相応しい望みであった。彼は野心そのものであった。栄耀栄華も美女もそれへの添え物に過ぎない。彼は野心そのものといっていい男であったのだ。
「それがまず第一じゃ」
「左様ですな。ではあの美女は将軍にお渡しすればよいのです」
「貂蝉をか」
「何を今更」
李儒はそう董卓に返す。
「かつて将軍を養子にされた時のことを思い出して下さい」
かつて呂布は丁原の養子であった。丁原は董卓と敵対していたのだが養子である呂布が董卓に寝返り、彼により殺されている。この時董卓は彼に贈り物として愛馬赤兎馬と財宝を贈っているのである。
「そして今度は美女を。それだけです」
「それだけと申すか」
「その通りです」
彼は毅然として述べる。
「ですからこの度もです。将軍あってこそです」
呂布の天下に轟く武勇。それこそが董卓の最大の切り札であった。彼は呂布あっての権勢なのである。
「ですから」
「天下の為にか」
「そうです」
また述べる。
「御決断を」
「わかった」
董卓は苦い顔をしながらもそれに答えた。
「ではそのようにしよう。それでいいのじゃな」
「はい」
李儒はすぐに頭を垂れてきた。
「その通りです。よくぞ決断して下さいました」
「では呂布に伝えよ」
彼は言う。
「貂蝉をやるとな」
「わかりました」
李儒はその言葉に勢いよく頭を垂れる。そうして宮殿を後にする。
彼はこの時あまりにも喜んでいたので気付かなかった。部屋を覗き見る一人の女がいたことに。彼女はすぐに動いたのであった。
董卓は李儒と別れた後で寝室に入っていた。ベッドの上でくつろいでいるとそこに貂蝉がやって来た。
「太師」
「おお貂蝉いいところに来た」
董卓は彼女に顔を向けて言う。
「実はのう、そなたを」
「私を」
彼が何を言うのかはわかっていた。ここは芝居に出ることにした。
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