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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第二巻相当】
第二十三話「ある女生徒の挑戦」
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反らすことなんて出来ないはず。
それなのに、なぜ……!
「こうも悉く往なすことができるんだ……!」
「ふむ」
いつの間にか焦燥感に彩られていた私を先生はどこまでも冷静に観察してくる。
その心の底まで見極めようとする視線に一旦冷静さを取り戻した。
アスファルトを蹴り大きく距離を取る。
再び間合いが開くが先生は追撃することなく見送った。
軽く息を切らせる私とは対照的に先生は呼吸一つ乱していない。
それが心に小さくないダメージを与えた。
「先生、一つ聞かせてくれ」
「ん?」
「……私の拳は軽いか?」
「ふむ……」
私の問いに先生は顎に手を当てた。
「軽いか重いかで言えば、重いな。それにスピードもある。恐らく並の者なら避ける間もないだろう」
「それならなぜ、先生はああも簡単に避けれるんだ?」
それが不思議で仕方ない。
本来なら手合わせの最中にこういうことを聞くべきではないだろうし、答えてもくれないだろう。
しかし、先生は人が良いのか嫌な顔一つせずに教えてくれた。
「いいかい、朱染。どんなに重い攻撃でも、身体的な接触による攻撃なら必ず力が篭る場所、力が集中する場所というものが存在する」
気軽な足取りで私の元まで歩み寄ってきた先生は「腕を突き出してごらん」と言ってきた。
どうやら解説をしてくれるらしい。
素直に腕を前に出した。
「そのまま力を込めて動かさないように。いいか、絶対に動かないくらい力を込めるんだ。……うん、今この腕は一本の鉄の棒と化している」
先生が私の腕を動かそうとするが、言われた通り能力を使って力を込めているので動かない。
「そして、今この腕……というよりは身体全体に力が篭っているわけだが、その中でもとりわけ“ここ”に力が集中しているんだ」
肘の少し先を指差す。指摘された私自身は特に過剰に力が篭っているようには感じられない。
しかし先生はその部分を軽く手刀で叩くと、それまでビクともしなかった腕が数センチ動いた。
「――と、まあこのようにその集中している場所を動かすと力全体が流れるわけだな。もちろんこれだけで朱染の力を完全に流せるわけではないが」
まあそれはまたの機会にだな。
そう言い残して先ほどと同じ距離まで律儀に遠ざかった。
「後はあれだな。目がどこを攻撃するか雄弁と物語っているぞ。もう少し目線に考慮するべきだな。……さて、今度は先生が攻めるとしよう。次の授業もあるからあまり時間も掛けられないしな」
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