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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第二巻相当】
第二十三話「ある女生徒の挑戦」
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なかったのは母様と亜愛姉さま、刈愛姉さまの三人だけだ。三人とも勝てないまでも手傷を負わせることは出来た。


 しかし……。


 この男は――須藤先生だけは……。


 勝てるビジョンが浮かばない。


 どんなに頑張っても、どんな状況でも、勝機というものを見出せないのだ。


 対峙しなくても勝てる勝てないはなんとなく分かる。それはある程度の力量があれば自ずと相手との実力差を感じ取ることが出来るからだ。


 しかし、先生が相手だとまったくビジョンが浮かばない。まるで地の底から高峰を仰ぎ見ているかのようだ。


 戦ってみたい、この先生と……。


 私の力がどこまで通用するのか、戦ってみたい……!


「呼び止めてすまない」


「気にしないでくれ。それで?」


「ああ。急な話になるんだが――」


 お互いの距離は五メートル。


 私は抑圧していた妖気を解放した。


「――手合わせを願う」


 私の言葉に先生はきょとんとした顔を見せた。


「手合わせ? 理由を聞いてもいいかな?」


「なに。先生は人間でありながら恐らく私よりも上の実力者だ。純粋に私の力がどこまで通用するのか試したいだけだ」


 一瞬、先生は遠い目をすると苦笑しながら頷いた。


「……なるほど。いいだろう。だがここだと回りに被害が出るだろうから、場所を変えるぞ」


 そう言って背中を向ける先生に私は素直に従う。





   †                    †                    †





 先生が向かった先は屋上だった。屋上は常に開放されているがこの日は無人のようだ。


「……閉じよ、空間よ。我は他者の侵入を拒否する」


 十メートルほど距離を取りぶつぶつと何かを口にすると、屋上を囲むように紫色のドーム上の結界が現れた。


 ……先生は結界まで操るのか。


「これでここには誰も立ち入ることができない。結界内は修復することもできるから朱染も全力を出しても大丈夫だ」


「それはありがたいな。私が全力を出すとどうしても被害が出てしまうからな」


『力の大妖』であるバンパイアにとってこの世は脆く、壊れやすい。


 どうしても力を振るうと周囲の物を壊してしまいがちになる。まだ力の緻密なコントロールができなかった私はよく家のものを壊しては母様に叱られたものだ。


「先に一本入れたほうが勝ちにしよう」


「構わない」


 妖力を全身に巡らせる。


 戦闘態勢を取る私とは対照的に先生は身構える様子もなく、だらりと両腕を垂
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