3部分:第三章
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」
しかし李儒の言葉は届かない。彼はそのまま馬を飛ばして王充の屋敷に向かった。その手にはあの画戟があった。
「王充殿、おられるか」
彼は王充の屋敷に入るとその戟を手に叫んだ。
「出て来られよ、話がある」
「おお、これはこれは将軍」
王充はにこやかに彼の前に現われてきた。
「ようこそ来られました。御元気そうで何よりです」
「よくもわしをたばかったな」
呂布は挨拶も返さず王充を見下ろして言い放った。
「一体どういうつもりだ、貂蝉はわしの妻になるのではなかったのか」
「それでございますか」
「そうだ」
言いながら戟を前に突き出す。それを王充の喉に当てて言う。
「わかるな、わしがこれを持って来た意味が
「一体何を」
「己の胸に聞くのだ。何故太師のところにいるのだ」
「申し訳ありません」
彼はそれを聞くと頭を垂れてきた。
「全て。仕方なかったのです」
「仕方ないと」
「はい。私も娘を将軍にお渡しするつもりでした。ですが宴に来られた太師が」
「そうであったのか」
「左様でございます。私も困っているのです」
涙を流して答える。この時彼は心から泣いていた。しかしそれは呂布とのことに対して流したものではない。娘を想っての涙なのだ。
「どうすればいいのか」
「何ということだ。それでは」
「はい」
王充は答える。
「私ではどうしようもなかったのです。返す言葉もありません」
「いや、いい」
呂布はさめざめと泣く彼を見て言う。その涙を簡単に見誤ってしまったのだ。
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