ターン28 鉄砲水ともう1つの『真紅』(後)
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いまま生きていけるほど、世界が優しくなかったというだけだ。
世界で生きていくために現実を受け入れ、それでもどこかぽっかりと空いた彼の心。そんな時に偶然出会ったのが、とある漫画雑誌に付録としてついてきた1枚の白いカードだった。
当時デュエルモンスターズ……その世界では遊戯王と呼ばれていたカードゲームについては名前程度しか知らなかった彼だが、漫画が読みづらいと雑誌からカードを切り離し、特に意識せずに袋とじを開ける。その瞬間、彼の人生は大きな転機を迎えることとなる。書いてある効果は素人以下のレベルである当時の彼にはまるで意味が分からなかったが、そのイラストにどこか心惹かれた彼はそれを保管し、そのモンスターが動くところが見られるという話を聞きつけて当時放送していた遊戯王のアニメを見るようになる。その世界観にすっかり取り込まれた彼が自らもデッキを作るようになるまで、そう時間はかからなかった。彼にとってすべてのきっかけになったそのカードの名を、レッド・デーモンズ・ドラゴンという。
彼は吹き飛ばされながら、朦朧とした意識の中でそんな走馬灯を見ていた。若いうちに死んだ後、諦めたつもりで諦めきれなかった夢、ヒーローになれると思って転生したこと。レッド・デーモンズ・ドラゴンを生で見たかったからというのもあるけれど、それぐらいの役得は許されると思っていたこと。なのに、世界は廃墟になったこと。その世界の遊星が、クロウが、アキが、龍亞が、龍可が、そして他のさまざまな仲間たちが傷つき倒れていく中で嫌というほど思い知った、自分ではジャック・アトラスの代わりに、キングの代わりになることなど不可能であったこと。そしてもう2度とあんな思いを味あわないために、誰もあんな目に合わせないために転生者狩りとしての道を選んだこと。
彼は思う。結局、俺はヒーローの器じゃなかったのだと。今の馬鹿みたいな様子はどうだ。強い力を持っていたにもかかわらず救えたはずの世界ひとつ救えず、今だってせっかく出てきたのに当初の目的を果たすどころか逆に軽くあしらわれ、ただただ道化として終わっただけだ。せめて最後にカッコつけられたことだけが救いといえなくもないが、それにしたってただの自己満足なんじゃないか、と。
ああ、ちくしょう。地面に頭を打ち付けて衝撃が走った時、彼はなぜ自分がこのデュエルに参戦したのかという真の理由に気づき、ひそかに心の中で皮肉に思った。自分をはじめとした世界の行く末を知る転生者たちとは違い何も知らないうちに、どうなるのかもわからずにそれに巻き込まれている清明は、言ってみればただの被害者だ。なのに誰のことも恨まず、人外の存在へ変わりながらも前向きに生きる清明の姿は、彼にとってどこか眩しいものだったのだ。転生者が自分のような悲劇を見る前に始末をつける、そ
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