傀儡師
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そして、大の字で張り付いた壁からべりべりと剥がれていくと、最後には床に背中から倒れた。
目を回すリズの額にできた小さくないこぶもノエルが覗き込む前で燐光に包まれてみるみるうちにひいていった。
「貴様、エルフか――それとも精霊か?」
ノエルはリズが平行詠唱している場面を眼前に浮かべながら訊く。
「ち、ちがいまひゅ〜」
(…………だろうな、まさかこんな奴が同族でも、あの精霊族であるはずもない)
と、呂律が回っていないリズを見下ろしてノエルは結論を下した。
「おい、行くぞ」
ノエルは乱暴にリズの腕を掴むと、立たせようとした――そんな時だった。
「そこの女ども。何か困っているようだが手を貸してやろうか?」
男の下卑た野太い声が響いた。
振り向くと、そこには声を裏切らない汚らしい手入れのされていない防具を身につけている醜悪な顔の冒険者が、その男と大差ない醜悪な仲間を二人連れて立っていた。
その男共は遠慮のかけらもない下心がありありと窺える眼差しでノエルの肢体を舐めるように眺めていた。
「困ってなどいない。だから視界から消えろ。目障りだ」
取り付く余地も残さず、ノエルは拒絶と嫌悪の意志をあらわにして言った。
「ああん?良心から言ってんだぞ!」
「そうだ、そうだ。エレス様の好意を無下にするとは!」
「何様のつもりだ、下級冒険者風情で!」
リーダーらしき男が顔を真っ赤にして怒鳴ると、続けて取り巻きがリーダーの影から叫んだ。
「はっ、私が下級冒険者だと?貴様等の目は節穴か?」
だが、もちろんそれに怯むことなく、ノエルは剣呑な声音で言った。
その瞳には危なげな光が宿っていて、取り巻き達はそれに飛び上がるように驚くと、さっとリーダーらしき男の後ろに隠れた。
だが、豪胆なのか、鈍感なのか、馬鹿なのか、リーダーらしき男は物怖じせず吠えた。
「節穴だと!?防具も武器も持っていない小娘が下級冒険者ではないと言うのか?俺を馬鹿にするのも大概にしろ!」
ノエルは男の言葉にはっとして自分の身体を見た。
そして、自分が薄い上衣とハーフパンツという完全寝巻きの姿であると視認すると、初めて、自分がホームから着の身着のままで飛び出したことを思い出し、今更の如く、かーっと一瞬で顔を赤くさせた。
「だが、今日は気分がいいから許してやってもいい。何と言っても、朝一番でダンジョンに潜ったら死体だらけだったからな」
が、男が哄笑しながら言った言葉にノエルは、はたと何かに考え至ったのか、落ち着きを取り戻し、目を細めた。
「……そうか、なら死体があったところまで案内してもらおうか」
ノエルは顔を上げると、
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