第148話 救出
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かがなさるのです!? 人質を取られたとはいえ、貴方様を殺そうしたではありませんか?」
張玄白は自らの罪を棚に上げて黄忠を糾弾した。正宗の表情から温度が引いていくのが傍からみても分かった。張玄白もそれを感じ取ったのか黙った。
「黄漢升は余のために蔡徳珪を討伐する軍に参加すると申し出た。お前はどうなのだ?」
正宗は暗に張玄白に対して「味方になるつもりがあるのか?」と聞いていた。正宗の返した言葉に張玄白は言葉を失った。黄忠は劉表を裏切ったのだ。正宗はわざわざ声を高くして喋っているため遠目で見ている者達の耳にも聞こえていた。周囲からざわめきが聞こえてきた。
「私も貴方様にご協力すれば温情をいただけるのでしょうか?」
意を決した張玄白は正宗におどおどしながら質問した。
「蔡徳珪を討伐するまでは豫州にでも疎開していろ。討伐が住めば南陽郡に戻ること許す」
「誠でございます?」
「疑うなら書状にしたためてやる」
張玄白が何かを喋ろうとした時、彼は喋ることなく首がおかしな方向に折れて前のめりに倒れ込んだ。血塗れになった男が凄まじい形相で立ち上がると張玄白の首をへし折ったのだ。続いて正宗に襲いかかろうとするが、愛紗から背中越しに青龍偃月刀で叩き斬られ絶命した。
「敵ながら天晴な奴だ」
正宗は愛紗に斬られた名前も知らない男に馬上より声を掛けた。
「この者達の扱いはどうされます」
泉が張玄白と蔡瑁の家臣を交互に見た。正宗は暫し考えていた。
「張玄白は遺体を遺族に返してやれ。この者一族は蔡徳珪討伐まで南陽郡より追放せよ」
そう言うと愛紗に斬られた男に視線を移すと暫し見ていた。
「名の知れぬ勇士の扱いだが。その男の行為は万死に値する。しかし、その忠節は真のものでもある。だが、最後まで蔡徳珪に味方した以上、逆賊として扱わざる負えまい。その男の首は市中に晒し、その体は野に打ち捨てよ」
正宗の言葉から張玄白を殺した男への情けが一瞬感じられたが、衆人の中でけじめをつけるため敢えて苛烈な裁きを下した。信賞必罰。これを徹底することで正宗は蔡瑁に与する者達に揺さぶりを掛けたのだった。蔡瑁に味方する者達はことどとく逆賊として扱う。正宗の宣言とも取れる言動だった。
正宗が裁きを下した頃、黄忠の娘・璃々が朱里が乗る馬に一緒に乗って現れた。この様子を遠巻きに見ていた者達は更に動揺していた。先程までの一部始終を見ていただけに璃々の登場は動揺に拍車を駆けるのは十分だった。辺りはからは「真逆、蔡徳珪様が黄漢升様の娘を誘拐するなんて」、「蔡徳珪様ならあり得なくもない」など彼らは口々に蔡瑁のことを話していた。正宗は周囲の声を耳にしながら、兵士達によって片付けれていく張玄白と男を黙って見ていた。
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