第148話 救出
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た表情に変わっていた。
「正宗様、奸賊を引き立ててきました」
愛紗は大男を軽々と正宗の門前に突き出した。男は寝間着同然の姿で体中血塗れだった。この男が投降を拒否して抗った証拠といえた。
「愛紗、よくやった」
愛紗は正宗の面前まで進みであると片膝をつき拱手をした。
「勿体無きお言葉! これからも励みます」
正宗は愛紗の返答に頷くと、張玄白に視線を戻した。
「お前の屋敷から何故に蔡徳珪の私臣がいる? お前が蔡氏と蔡徳珪の祖父の代より商いがあることは知っている。この者がお前の屋敷にいた理由を説明せよ」
正宗は張玄白を追い込むように言った。張玄白の顔は青ざめ震えていた。彼は現在血塗れになって倒れている男に命じて黄忠の娘を屋敷の外に連れ出そうと考えたのかもしれない。張玄白の表情からは絶望に満ちた表情を浮かべていることからも、それに近いことを行おうとしていたのだろう。
「清河王、私は被害者でございます! 蔡徳珪様に脅されて泣く泣く黄漢升様のご息女を監禁しておりました! わ私は誘拐には関わっておりません。誓って誘拐には関わっておりません。黄漢升様のご息女には出来るかぎり不自由ないようにしてきました。どうか。どうか。私にお慈悲を――!」
張玄白は正宗の面前でなりふり構わず地面に頭を擦りつけて喋り初めた。
「では知っていることを全て吐け」
「そそれは」
張玄白は正宗の提案に狼狽えた表情に変わった。長らく蔡氏と懇意にして商売してきた彼の一族にとって蔡氏を裏切ることは身の破滅を意味することなのだろう。未だ蔡氏は健在なのだ。正宗が荊州を完全に掌握しているなら、彼もなし崩し的に保身に走ったことだろう。彼からは明らかに蔡氏を完全に裏切ることに抵抗を感じているようだった。彼は既に「蔡瑁に脅されて協力した」と言っている。彼はそれが裏切りであると気づいていないようだった。あまりに気が動転して冷静な判断がつかないのだろう。
「余に黄漢升の娘を誘拐した一部始終を話すことを拒否するか?」
正宗は冷徹な視線を張玄白に向けた。
「滅相もございません! ですが蔡徳珪様を裏切れば私達一族はどうなるかわかりません」
張玄白は正宗の斬り殺されると思ったのか震えながら必死に弁明した。
「逆賊に味方する貴様も同じく逆賊。大人しく話せば罪を軽くしてやる。ただし、お前達一族は南陽郡から放逐させてもらうがな」
「放逐。そのような無体な! 私達一族に野垂れ死ねと仰るのですか!」
張玄白は正宗の面前に更に近づき、正宗を仰ぎ見るように必死の形相で訴えた。
「余を殺そうとする計画に加担したお前が何を言っているのだ?」
正宗は張玄白を侮蔑するような視線を向けた。
「では黄漢升様はい
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