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タイヤル族の服
第六章
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「女将が」
「日本の服だな」
「日本人なので、私達も」
「そうか、しかしだ」
「日本人でもですね」
「別に日本の服を着なくていいがな」
 そうした決まりは一切ないっというのだ。
「しかし女将がそうした考えならな」
「いいですか」
「そこはそれぞれだ、私が言うことではない」
「左様ですか」
「うむ、しかし酒もつまみもよかった」
 もう服は一番である。
「妻を迎え子供が出来たら子供達にも伝えよう、無論生徒達にもな」
「そうされますね」
「いい服、店だった」
 こう笑顔で言ってだ、柳原は上機嫌で自分の部屋に戻った。そしてこの日はそのまま寝てだった。次の日に生徒達と共に意気揚々と台北に戻った。
 これは日本が台湾を統治していた時の話だ、だが。
 戦争が終わり台湾が日本から離れて七十年、その時に。
 鳥来で一人の日本人の若い男性が遊んでいた、居酒屋で粟酒を飲みながらタイヤる族の服を着ている女の店員さんと話している。
 日本人はお店の人にだ、こう言った。
「実は曽祖父がなんです」
「お客様のですか」
「はい、曽祖父は陸軍軍人で戦後は博多で働いていましたが」
 その曽祖父のことから話すのだった。
「台北の中学で教鞭を取っていたこともありまして」
「あっ、そうなのですか」
「それでその時にここに来たことがあったそうでして」
「それでそのひいお祖父さんにですか」 
 お店の人は中々流暢な日本語で彼に問うた。
「教えてもらったんですか、鳥来のことを」
「そうです」
「それで来られたんですね」
「旅行で、しかし」
「しかし?」
「曽祖父が言っていた通りです、温泉も食べものもよくて」
 それにというのだ。
「この粟酒も美味しいです、しかも服も」
「私達が今着ているこの服がですね」
「いいですね、彼女にお土産で買いたくなりました」
「それはいいことですね」
「曽祖父もここで楽しんだそうで」
「そしてお客様も」
「これも縁ですね」
 彼は飲みつつにこりと笑って言った。
「曽祖父は大尉の時に来たそうです」
「日本軍のですね」
「はい、陸軍の」
「それでひいお爺様は今はどうされてますか?」
「死にました、私が子供の頃に老衰で」
「そうですか」
「はい、けれどずっと私に言っていました」
 飲みつつだ、店の音楽も聴きながらの言葉だ。yタイヤル族の服を着た人達が奏でるタイヤル族の音楽を聴きながら。
「一回この鳥来に行けと、そして楽しんで来いと」
「そして今回来られたのですね」
「いい場所ですね、温泉もいいですし」
「それにこの服もですね」
「いいです、また来たいですね」
「何時でもお待ちしていますよ」 
 タイヤル族の服を着た女の人は彼に笑顔で応えた、その赤いズボンの上に腰巻を巻
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