10.始まりと終わりの国
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走り回っている。
優劣はなく、誰が一番と争う事もなく、自然と他の種族と手を取り合って逞しく生きる人々。崇める主神がいないからこそ神を頼らず力を合わせる彼らを見ていると、不思議な暖かさが胸に灯った。
――別に復権などしなくとも、誇りは抱いていられる、か。
「そういうのも、アリだね」
「アリって、何がだい?」
「いや……冒険者を引退したらこんな土地に住むのもいいなと思ってね」
「それはいいな!住みたくなったらいつでも歓迎するよ!彼らの中にも同じことを言って移り住んできた人はいるしね?」
人のいい笑みで肩を叩くオーウェンに冗談めかして笑いながら、心の中で小さく呟く。
(神がいないから対等になる………そういうこともあるのか。ロキ様に聞かれたら怒られるかな)
「おいフィン!何ぼさっとしてんだ!正面の瓦礫撤去が終わる!奥に行って魔物を狩るぞ!!」
「そう急かさないでくれよ、今行くから!………それじゃ、先に行きます!」
「魔物は頼んだぞ!!」
愛槍を掲げてその期待に応え、フィンは仲間と共に暗い渓谷の奥へと足を踏み入れた。
生存者は、まだ見つかっていない。
= =
ベート・ローガは狼男だ。
戦いの実力もさることながら、彼はその嗅覚にも自信がある。その嗅覚が、魔物の他に別の臭い――ヒューマンの臭いを微かに感じとったのは、渓谷の奥までたどり着いた時だった。
この臭い……汗の混じったヒューマンで、恐らくはまだ青年程度の年齢。弱ってはいるが、生きている人間の気配だ。
「この臭い、あのウルフの群れの向こうからか……?おい、フィン!奥から微かにヒューマンの臭いがするぞ!死臭じゃなくて生きてる奴だ!!」
「つまり、生存者の可能性が高い訳だね?……アイズ!!魔物の群れを正面突破して生存者を発見、確保!!他は出来るだけ魔物の注目をこちらに退き付けつつ迎撃!生存者の身柄を優先して魔法は使用せず、群れが怯えて逃げないように本気で倒すのは避けるんだ!!――やっと見つけた生存者だ、必ず助けるぞ!!」
「おおよ!!」
「……わかった」
「了解!前線は任せます!!」
フィンの指示にファミリアがすぐさま行動に映る。本気で戦ってはいけないというのはやりづらい内容だが、相手の魔物は大した脅威でもない。それに、今の今まで一人として生存者を発見できていない事実にみな嫌な想像を掻きたてられていたため、生存者がいるという情報は何よりの活気になった。
「…………邪魔」
剣姫アイズが前へ突出する。その速度は光の如く、そして繰り出された刃は嵐の如く。
瞬間的に響いた、キキンッ、という甲高い音と共に、彼女の目の前にいた複数のウルフとコボルドがバラバラに引き裂かれた。
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