巻ノ三 由利鎌之助その一
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巻ノ三 由利鎌之助
「ではそれがしはこれで」
「ここから甲斐に向かわれますか」
「はい」
そうだとだ、雲井は諏訪大社の前で幸村に答えた。由利を加えた一行は諏訪に戻っていた。既に由利の手下達は皆上田に向かっている。
「そうします」
「今甲斐は物騒ですが」
「織田家がいなくなり、ですな」
「国人達が騒ぎ徳川、北条が争っております」
「左様ですな、しかし」
「それでもですか」
「少し行ってきます」
こう幸村に答えたのである。
「またお会い出来ればその時は」
「はい、楽しみましょうぞ」
「さすれば、それにしても」
ここでだ、雲井は笑ってこんなことも言った。
「山で食べた熊は美味しかったですな」
「ははは、それがしこれでも料理は得意なのです」
由利が明るく笑って雲井に答えた。
「特に鍋が」
「得意ですか」
「熊肉だけでは臭く癖も強いですな」
「だからそこに茸や山菜を多く入れてですか」
「そして鍋にしました」
それを四人だけでなく手下達も入れて食べたのだ。
「あの様に」
「はらわたまで食べましたが」
「はらわたも美味かったですな」
「はい、胃や腸も」
無論肝や心の臓もだ。
「美味かったです」
「ああしたものを食うべきなのです」
「熊はですか」
「いえ、あらゆる獣は」
熊に限らずというのだ。
「独特の美味さがありまた滋養にもいいので」
「だからですか」
「はい、食うべきなのです」
「左様ですか、いいことを教えてもらいました」
「では今度からは」
「はい、それがしもはらわたを食います」
獣のそれをというのだ。
「鍋もああして茸や山菜を入れます」
「あとあれば生姜等を入れるとです」
「よいのですな」
「塩の気は血を使えますので」
実際に由利は熊鍋に血を使っている。
「生姜や瑚椒も使うと尚よいです」
「成程、ではそのことも覚えておきます」
「さすれば」
こうしたことを話してだった、雲井は幸村達と別れた。そしてだった。
雲井は諏訪から甲斐に一人向かった、だが山道を歩いていると。
彼にも忍装束の者達が周りに来てだ、問うたのだった。
「雷獣殿、次はです」
「甲斐の国ですが」
「あの国は殿が強く求められています」
「ですから」
「うむ、念入りに調べねばな」
雲井は雷獣と呼ばれつつ忍装束の者達に応えた。
「是非な」
「そうしましょうぞ」
「色々とややこしいですが」
「乱に気をつけつつ」
「隅から隅まで調べましょう」
「そうしなければな。しかし真田幸村殿にお会いしたが」
ここでだ、雲井はこうも言った。
「あの御仁、噂以上じゃな」
「噂以上の傑物ですか」
「信濃一の」
「いや
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