踏み外した歴史編
第5話 “洗礼”と“資格”
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3人いなくなっただけで、店内はずいぶんと静かになった。
初瀬と城乃内の様子を見た巴は、とりあえず碧沙のいるボックス席へ戻った。
すぐ隣のボックス席では、葛葉紘汰と呉島貴虎がどんよりとしたオーラを放っている。すでに万策尽きたと言わんばかりだ。
「(ね、巴。これからどうするの?)」
碧沙が巴の隣に来て、囁いた。
「(碧沙は、このままヘルヘイムがはびこっていたら、生活に困る?)」
「(わたし自身と、あと裕也さんは、抗体があるから困らないけれど……他の人は困るでしょう? 食べたら怪物か苗床になる寄生植物がそこら中にあるなんて。やっぱりイヤだわ)」
「(オーケー。碧沙がそう言うなら、本気出して、ヘルヘイムをどうにかする方法を考えましょうか)」
碧沙は腕と足を組んで考え始めた。
サガラによれば、始まりの女が知恵の実を渡した男が世界の覇権を握るのだという。
有力候補は、紘汰、光実、戒斗。
内、光実は舞に選ばれなかったので除外。
残るは葛葉紘汰と駆紋戒斗だが、そういえば、巴は彼らが知恵の実を手にして「どう使うか」を知らない。
まずはこの二人に世界の未来予想図を聞きに行こう。
「紘汰さん」
「んあ?」
「紘汰さんは知恵の実を仮に手にしたとして、どんな世界を創るのですか?」
「……ごめん。今はちょっと、考えらんねえや。舞のことでいっぱいいっぱいで、さ」
「そうですか。失礼しました」
紘汰は保留。
ならば次は戒斗に聞こう。出ていった裕也たちから舞の件を聞けば、戒斗も湊も帰らざるをえまい。巴はただ碧沙と一緒に待っていればいい。
――そう、楽観していた。
耀子は戒斗に付いて、ユグドラシル・タワー内を歩いていた。
率いるレデュエを紘汰が打倒したからか、インベスは1体も現れなかった。侵略の名残にヘルヘイムの植物が廊下のあちこちを這うばかりだ。
戒斗は言った。「ヘルヘイム抗体がある場所へ案内しろ」と。
凌馬の秘書をしていたことで場所は知っていたが、そこへ行って戒斗が何をするつもりかは聞いていない。
正確には、聞けないでいる。
ずっと胸に居座る嫌な予感が的中してしまいそうで、聞けない。
「ここよ」
研究用のラボの一つのドアを開いた。戒斗は無言で中に足を踏み入れた。
耀子は対インベス化免疫血清のある棚まで歩いていって、ずらりと並んだ試験管を木の固定具ごと持ち出した。
「これがヘルヘイムの毒を跳ね除ける力か」
「あなた、やっぱり――」
――市民の避難活動中。ドルーパーズでの食事がちょうど裕也と戒斗で重なった時があった。
“角居。お前は一度インベスになって人間に戻ったと言
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