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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第三四話 忠信
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この手のPTSDに気の利いた言葉は逆効果となる場合が多い。
寧ろ贖罪を求めている人間からすると、欲しているのはどうやったら罪が贖えるか、
許されるのかだ。
だが、死人に口なし。死んだ人間が誰かを許すという事なんて未来永劫ありえないのだ。
唯依は精一杯やった、その結果がアレだったのだ。
元より大局的視点から見れば彼女のあの状況は不可避だった、仕方がないともいえる。真に責め苦を負うべきはあの状況を招いた、勝てる戦いを逃した無能どもに背負わせるべきなのだ。
しかし、自分の無力に涙している人間にとって、それは何の救いにもならない。
そして………許されないことが救いに成ることもあるのだ。
「まぁ、貴官の言葉が発破になったのには違い無いだろう。夫としてそなたに感謝を。」
「……なんかそうしていると本当に五摂家みたいですね。」
「これでも色々苦労してるんだぞ。……そなたにも苦労を掛けるだろう。」
苦笑いを零す忠亮、今まで一介の衛士であれば良かったのが五摂家への養子入りした身ではそのままではいられない。
そして、人の上に立つという事は立ち続けるために誰かが代わりに傷つくという事でもある。
「……覚悟は出来ています。それに、彼女にあの言葉を掛けたのもいずれ、私が貴方のお世話になる可能性があるからですし。」
「なるべくそうはならんように尽力はするが……すまんな。」
重々しく答える今井智恵、それに対し謝罪を含んだ返答を返す。
諸外国へ赴く五摂家の人間に異性の警護人、その最たる理由はハニートラップ除けだ。
相手がそういう手段を用いてきたのならば、既に相手がいると見せつけなければならない事もあるだろう。
先ほど唯依にそういった言葉を投げかけたのは、篁頭領としてそして仮にも五摂家の一人を夫に迎える妻としての立ち振る舞いを意識させる為だろう。
「謝らないでください。貴方はこれからきっと多くの人を救う。あの子の悲劇を起こさないようにするには貴方の様な人間が必要なんですから。
偉人が偉人として大成するには凡人も必要でしょう。ならばその一翼として尽くすこと吝かではありません。」
「頼りがいのある言葉だ、お前も唯依に負けず劣らず良い女だよ。果報が過ぎて怖くなるな。」
「稀代の猛者が随分と弱気なことを口になさるのですね。」
「そこは謙虚とか慎重とか言ってもらいたいな―――己を支えてくれ。」
「はっ!拝命、承りました。」
膝を着き、首を垂れて臣下の礼を取るは白き斯衛、今井智恵だった。
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