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猫の憂鬱
第4章
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じゃない…、銃刀法違反だぞ…」
「あ、そっか…」
吊り上がった其の目に、コウジはくしゃりと笑った。
「御免、雪村さん…、あんたの人生、滅茶苦茶にしちゃった…」
ネェ。
小さな、猫の声が聞こえた。
加納の腕に抱かれる猫が、コウジの異変を察知し、何も映らない目が笑うコウジに向いていた。
「きな粉、きな粉…」
「ネェ…」
「パパ、駄目かも。」
其の言葉を耳にした猫は、威嚇するように大きな声で“泣き”始めた。目の周りが薄っすら濡れ、加納の腕から落ちると其の儘コウジの首に身体を擦り付けた。
「本郷さん、其の猫、離して、毛が入るから。そしたら炎症が起こる、助かるもんも助からん…」
「良いです、其れで。」
自分だけ助かる気は無いから、とコウジの宗一に笑い、此の場に居る全員、落ち着き払っていた。薄いゴム手袋をし、頸部を龍太郎のジャケットで圧迫する宗一の静かな声だけ流れた。
「あかんよ、医者の前でこんな事したら。」
薄く笑うコウジに宗一も笑い返し、署にあった携帯用の酸素吸入器を口元に置いた。
「嫌がんな、往生際悪い。死んで逃げようなんて思うな、そんな事は、ロクデナシがする事よ。御前は生きて、嫁と雪村に詫びるんよ。ええな?俺の前で死んだ奴、居らんのよ、此れ、自慢よ。」
サイレンの音が聞こえた、狭い部屋に隊員が押し寄せ、なんです此の猫、と当然云われた。ストレッチャーに乗せられたコウジに宗一は付き添い、其れに猫も付いて行こうとしたので加納が抱き上げた。白に近い灰色のスーツに血が移り、気に入って居たのですが廃棄ですね、と失笑した。
「アオ…、アオ…!」
其れは聞いた事もない“彼女”の怒りだった。
「大丈夫、大丈夫ですよ、きな粉、ワタクシがきちんとお返ししますから。」
笑顔で囁いた加納は、猫の鼻に付く血を自分の頬に付け、其の儘セイジの前に立つと思い切りスチールデスクを蹴飛ばした。腹に直撃したセイジは噎せ、怒鳴り声を撒き散らし、冷たいだけの加納の目を睨み付けた。
「一寸、こんな事やって良い訳?取調室で暴力って、大問題だろうが。」
「暴力?おやまあ、面白い。そんなつもりは無いのですよ、ワタクシ、足癖が悪くて、性格も悪いです、車の趣味も悪いですよ。うっかり足を伸ばしたら、長過ぎるのでしょうね、うっかり当たってしまったのですよ。其処に偶々、貴方がいらしただけです。言うなれば、其処にいらっしゃる貴方が悪い。嗚呼、汚らわしい。なんたる汚物。椅子が可哀想。」
「てめぇ、ふざけんなよ。」
「おやまあ、何です、其の手は、汚らしい、暴力ですか?はっきりとした意思でワタクシを殴るおつもりなのですか?全くなんと野蛮な。木島さん。」
「公務執行妨害の現行犯だ、其の手は。」
加納の胸倉掴むセイジの手首を木島が掴み、龍太郎が証拠写真を撮った。
「言い逃れは出来
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