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猫の憂鬱
第4章
―5―
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しっかり椅子に縛り付けた。梁にタイを通し、椅子に涼子を立たせたセイジは、特等席に構えるコウジの頭をしっかりと涼子に向けた。

――やだ…、見たくない……!
――見とけよ。

日光に当たる事の無い涼子の白い肌は段々と変色し、アコニチンが回り始めた涼子の苦痛に涙が流れた。うぐ、と鈍い音が涼子の胸部からせり上がった時、耳元で悪魔は笑った。

――見てな、此れが、御前の愛した女の最期だよ。

口端から濁った液体が溢れ、涙で滲む視界で眺めながら息を繰り返した。

――もう少し…

瞬間、涼子の黒目は瞼に隠れ、椅子が派手に倒れた、セイジの顔は恍惚と歪み、コウジは思い切り瞼に力を入れた。

――あは、凄い…!

ツンとした刺激臭が鼻腔を付き、其れがアンモニア…尿だと判った時、コウジの涙は止まった、面白い程に。ビクビクと手足を痙攣ささせ、強烈な刺激臭と腐敗臭を醸し出した涼子の姿に、セイジは勃起寸前の快楽を覚えていた。

――人間って、首吊ると本当に失禁脱糞するんだ。

嬉しそうに涼子の身体から落ちる其れと音にセイジは云った。
「夜でしたから、私は其の儘出張先のアパートに向かいました。」
呟くセイジに木島達は顔を見合わせた。
「夜中です、私が東京に戻った事も知らなければ、不在も判らないようなアパートでした。」
手足を痙攣させ、糞尿を床に垂らす涼子が網膜から消えない……コウジは頭を抱えた。
「刑事さん…」
半音下がったコウジの声に、無線受信機で聞いていた龍太郎は戦慄を覚えた。
馬鹿が、御前は死ぬ事ないのに…
セイジの取調室から龍太郎が飛び出した時、駄目じゃん刑事さん、持ち物検査は下着の中迄しないと、と笑うコウジの清々しい声を聞いた。マジックミラーで確認する課長もコウジが居る取調室にへばり付き、止めろ、と誰にも聞こえないのに呟いた。不気味に笑ったコウジは笑顔でスラックスの中に手を突っ込み、井上と龍太郎の姿を見ると、下着に手を伸ばした。

もう遅いよ…

其の言葉と共に、下着の中に隠し混んでいたカッターナイフでコウジは自身の顎下を鋭利な金属でなぞり、龍太郎に鮮血を見せた。
己の首をカッターナイフで躊躇いもなく掻っ捌いたコウジの姿に、横で傍観していた宗一が動き、慌てて取調室に入った。
「アホか御前、助からんぞ。」
場所が悪かった。出血を止める為には、心臓から送り出される血を止血するのが最もだが、首を圧迫した場合、今度は脳に酸素が行かなくなる、宗一は云っていた、脳の活動は、酸素だと。
止血する為に脳に向かう酸素を止めれば、脳細胞が活動停止する…。
ジャケットで首から送り出される血を吸収しても意味は無い。雪村凛太朗になる前の癖か、泣きそうな顔で頭を掻くコウジを龍太郎は抱えた。
「タキガワ…、物騒な物、持ち込むん
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