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猫の憂鬱
第4章
―5―
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はじっくり龍太郎を眺めた。
「そんなに金が欲しかったか。」
「うん。」
「青山涼子が、亡くなった息子に与えた二億、貴様、何処にやった。」
「店出すのに使ったよ、後、俺の豪遊費。」
「刑事になって八年位だが、貴様のような卑劣で俗悪な奴、見た事無い。一生忘れんだろうな。」
「そ、アリガト。」
セイジも中々に負けず、龍太郎の神経を逆撫でた。
一方で横の取調室は、静かだった。木島達が大人しいのもある。
「あんた、マジに惚れてたんだな。」
井上の言葉に、コウジは下唇を噛んだ。
「本当なら、あんた知ってたし、蓬餅、食べさせなくて、済んだじゃん。」
歪む井上の顔を一瞥するコウジはバツ悪そうに俯いた。
「…うん。」
「けど、アレだろ?可愛さ余って、憎さ百倍って、よっく云うぜ。好き過ぎて、殺したんだろ?兄貴が怖ぇからじゃねぇ、あんたの、惚れた気持ちで食べさせたんだろ?」
「うん…」
「食べさせたのは、涼子が、兄貴にやっぱり惚れてた、って事だよな。そら殺すわ、はは。」
乾いた笑いにコウジは視線だけ向け、自分の膝をぼうっと眺めた。
「兄は周到で、市販の蓬餅と其れを、同じパックに詰めたんです。涼子は薄々、殺される事を察してましたから、勿論最初は警戒してました。其処で私は、兄に云われた通り、市販の蓬餅を、涼子の目の前で食べました。其の残りを、涼子の目の前で、冷蔵庫に仕舞いました。トリカブトの速攻時間が二十分弱だと云うのを兄から聞かされて居て、リビングで録画した番組を見ながら、涼子が口にした時、兄に知らせたんです。」
「其処から、如何なった?」
木島の穏やかな声が響いた。
「蓬餅食べるね、と聞いた時、止める気が一瞬起きました、最悪、私も其れを食べようと迄、考えました…」
「でも、返事が着た。」
「そうです、兄から、三十分以内に着くと、返信がありました。」
青山涼子が其れを口にした第一声、其れは、「何、此れ」…。
「罪悪感が、肥大しました。」
偽蓬餅を摂取した青山涼子は一瞬で異物だと察したが、吐き出しはしなかった。お茶を飲み、テレビに向くコウジの横に座り、何分位で死ぬの?と聞いた程だった。
涼子は泣いていた、其れを肩で感じながらテレビに向いた儘黙って泣いた。

涼子、愛してるよ。

嬉しい。

こんな私でも、本当に必要とされてたんだ。

――きな粉ちゃん…
――ネェ。
――ママに顔見せて、もう見れないから。

其の言葉にコウジは目元を押さえた、何度も心の中で涼子に詫び、救急車を呼ぶべきか迷った。
悪魔は、何処迄も完璧で、コウジの揺らぎを何時でも悪循環に引き寄せた。

――セイジさん…
――御免ね?今から君には、自殺して貰うから。

笑顔で黄色のネクタイを取り出したセイジは涼子の首に巻き付け、コウジを
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