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猫の憂鬱
第4章
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「あの遺書と日記は僕が書いた物で、完全な左利きは、兄のセイジです。僕は、両利きです、左右何方の手でもペンを使えますし、箸も使えます、涼子は、其れを知ってます。」
取調室に入った雪村凛太朗事タキガワコウジは、落ち着いた口調で話し始め、日記が涼子の物だと思われたのは意外だった、と口角を上げた。
「日記の時は右で、遺書の時は左で書きました。其の時、猫を抱いて居たので。」
横の取調室で横行な態度で、調書する木島達に暴言吐くセイジと違い、コウジはパイプ椅子に足を乗せ、膝を抱えて居た。
「僕、昔からの癖で、文章の時、一人称が私になるんです。中学校時代、其れで苛められてました。でも、癖なんですよね。」
「日記を青山女史のだと勘違いしたのは、色でした。」
「色?」
「青山女史は、黄色が大好き、だから、黄色の日記で一人称が私、そして筆跡も違う…、見誤って居ました。」
「あの日記帳、買ったのは涼子なんですよ、だから黄色なんです。けど、結局使わないから、って。」
静かに時間が流れる其の横では、木島とセイジの罵声が飛び交っていた。
「吊るしたのも俺、蓬餅作ったのも俺、でも、食べさせたのは、コウジだよ。」
「御前は、何処迄卑劣なんだ。」
「本当、使えねぇな、コウジ。」
セイジに殴り掛かりたい気をスチームデスクに向け、じんじんとした痛みが掌に広がった。
「コウジは、御前のマリオネットじゃないんだぞ。」
「いや、彼奴は生まれた時から、俺の操り人形だよ。」
「青山涼子殺害に関して、タキガワコウジには情状酌量の余地はある、殺人幇助だけどな。でも、タキガワコウジは、ドイツでの事故から、呵責の念に囚われてるんだよ、判るか?此れに関しては時効が停止してるけど、此れを適応さすには、ドイツ当局の協力が要る。だから此の件でコウジは立件しない。」
「はぁ、殺し損だわ。」
其の言葉に、無線でセイジ達の取り調べを聞いていた龍太郎が、今居る取調室から無言で出、勢い良くセイジの居る取調室のドアーを開けた。
「貴様、人の命をなんだと思ってるんだ。」
龍太郎の気迫に、木島は、横で猫を抱き突っ立つ加納に、俺が向こうに行くと伝えた。井上と共同でコウジの取り調べを進められるか判らないが、最悪井上に押し付ければ良い話である。
龍太郎を一瞥したセイジは、鬱陶しいのが来たよと言わんばかりに顔を逸らし、煙草を咥えた、其れを龍太郎は奪い取り、床に叩き付けた。
「悪いが、取調室は禁煙なんだ。」
「ばかすか吸わせた後に云うのか?」
「重要参考人には吸わせるが、被疑者には吸わせん。送検してやるから覚悟しろよ。」
俺から逃げられると思うな。
狼の食い付きを加納は眺め、耳に掛ける無線受信機から雑音が入り、木島の声が続いた。
見ておけ、加納、此れが、一課の主力の狩りだよ。
其の言葉に、加納
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