第一章 Your Hope
9.燻る者たち
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しくアイズが説明する。
「ノブツナ・カミイズミ。剣士なら誰もが憧れる男ランキング1位。エタルニア公国軍第一師団『黒鉄之刃』が師団長にして、『ソードマスター』のアスタリスクを持つ、剣の極地にいる男。聖騎士と三日三晩の決闘をしても決着がつかなかった……敵軍三万人を、部下僅か100人で迎撃して撤退に追い込んだ……極東出身で、タケミカヅチ・ファミリアのメンバーはその殆どが剣聖を師としている……などなど、勢力圏の壁を越えた英雄的逸話をたくさん持つ剣士。その筋の神によるとダンジョン換算でその実力はLv.14相当という噂もあって、彼が出版した『初級剣術之極意』は圧倒的な完成度の高さから今ではプレミア価格で市場にも滅多に上がらない。緑の着物に流れるような黒髪、愛刀『伊勢守』を振るう彼の一撃はどんな屈強な剣士も一撃で切り伏せ、魔物は自分が切られたことにも気づかないと称され、天才的な戦略眼から『聖騎士』の親友にして最も信頼を置かれている。文字通りエタルニアの剣。彼の下には神からのファミリア申請の誘いや弟子入りを志願する人が後を絶たず、仕事外でも仁を貴び、悪を成敗し弱きを救う人格者でもある。一部では猫が好きという噂もあって………」
「待て待て待て待て待て!!量が、情報量が多い!!」
「アイズ!?ちょ、貴方そんなに喋る子だったの!?普段もっと物静かっていうか無口じゃん!?」
「あー………ひょっとしてだけど、憧れの人だったりする?」
「うん」
その問いにアイズはこくりと頷き、荷物から一冊の本を取り出した。
『初級剣術之極意』……しかも、ページを開くと極東の文字で「上泉信綱」と嫌味なまでに達筆なサインが書かれている。
「何年か前、偶然オラリオで出会ったとき、本人に貰った………宝物」
こころなしかドヤッと文字が付きそうな誇らしげな態度で見せびらかすアイズ。彼女がこの手の感情をファミリアのメンバーにも理解できる形で現わすことは今まで一度もなかった。唖然とするメンツは、心の中で異口同音に「珍しいものを見た……」と呟いた。
結局戦争云々の話はうやむやになったが、とりあえずその場は和んだ。
そして、その騒ぎを遠目に見ていたロキは、一緒にいる『お客さん』に笑いかけた。
「どや、オモロイ奴等やろ?」
客人は何かを言おうとして、口をつぐんだ。決して拒絶しているのではなく、それを口にするのを躊躇うほどに何かに迷っているような表情だった。ロキは、そんな彼女を励ますように肩にポンと手を置いた。
「……気落ちすんなってのは無理やろけど、気ぃ抜くときに抜いとかんと体が持たんで?」
「………お心遣い、ありがとうございます」
「気にすんなや。そんぐらいの懐の深さはあるつもりやで?巫女の一人や二人く
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