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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
第一章 Your Hope
9.燻る者たち
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弊するからだ。興国直後は内部の政策や治安維持。政治基盤の確保などにも当然追われるだろう。
 そして、前からアンチ・クリスタリズム思想から正教を疎ましがっていた連中にとっては、戦争で疲弊した目障りな国を二つ纏めて支配するいい機会となる。幾つかの国は当然のようにエタルニアに宣戦布告し、その土地やアスタリスクを奪おうとした。

 だが、エタルニアは宣戦布告とほぼ同時期にその国に電撃強襲を仕掛け、一方的に降伏させてみせた。彼らが独自に開発した「飛行石」を用いた「飛空艇」と、それによって乗り込んできたアスタリスク部隊によってだ。戦いでは兵士を移動させ配置するのに時間がかかる。それも他国へ戦争を仕掛けるとなると多くの数が必要だ。そのセオリーに従って主力の兵士の多くを送り出していた各国は、地形を無視した前代未聞の戦略に泡を吹いた。

 戦後の戦争を見越して、敢えて正教との争いでその札を伏せたまま最小の犠牲で大勝を収め、更にはどの戦でも目立った失敗や犠牲を出していない。

 攻めは少数精鋭による強襲。
 守りは極寒の高山に囲まれた天然の要塞。
 そして、第一級冒険者にも劣らぬアスタリスク所持者のリーダーシップと高い士気。
 さらに加えるならば、正教との戦争で激突した正教騎士団を可能な限り生かしたままの勝利だったため、現在では立て直った正教騎士団も同盟という形で協力を得ている。

 戦いに於いて自らは犠牲を出さずに相手の頭だけを叩いて敵を無力化させる戦略眼と、敵味方双方の将来を見越した的確な戦術論。魔物と人を同時に相手取って戦い続けたエタルニアという国家は、勝つことに特化していた。

「戦って犠牲が出るなら『まともに戦わなければいい』。そういう非情なことをあの連中は実行できる。それに――」
「『二聖』………」

 ぼそり、とアイズが呟いた。
 普段から無口で余りしゃべらない彼女が他人の言葉を遮るのは、とても珍しいことだ。

「お、おいアイズ。何だその『二聖』ってのは?」
「………エタルニア二大剣豪。『聖騎士』ブレイブ・リーと、『剣聖』ノブツナ・カミイズミ」
「公国最強の盾と、最強の剣だよね?それくらい私も知ってるんだけど?ベートそんなことも知らないの?」
「てめ、コラァ!そのあからさまに見下した顔止めろォッ!!」
「いや、流石にその二人を知らないのはどうなんだ……というか『聖騎士』の話はさっき出たばかりだろう」
「グッ……!も、もう一人のノブナガなんとかはどんな奴なんだッ!!」
「ノブツナだっつーの……」

 全然知らなかった、という恥ずかしい本音をそのまま言える訳もなく、ベートはヤケクソ気味に大声で誤魔化した。どうも周囲は全員知っているらしく、ティオナのぼそっとしたツッコミが地味に胸をえぐった。
 すると、これまた珍
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