第一章 Your Hope
9.燻る者たち
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した神の命令で人の子らが仰山死ぬんは余計に阿呆らしい。そげなこと起こしたらアカンのや……」
そう話を締めくくったロキの顔は、どこかうんざりしたような空虚さを感じさせた。
神として長き刻を生きてきたが故に、彼女は戦争を良く知っているのだろう。戦争という巨大な怪物が抱える悪逆、狂気、摩耗、悲嘆……人だけが行う非人間的殺戮活動。中にはそれを愉しむ神もいるが、生憎ロキはそうではない。ましてそれに自分のファミリアが巻き込まれるなど、堪ったものではない。
「ええか。もし行き先でエタルニアの兵隊と出くわしても、なるだけ喧嘩せぇへんようにな?政治的なトラブルもやけど、エタルニアの幹部クラス相手やと死人出すで。………それじゃ、ウチは『お客さん』の様子見に行くわ」
出発前に知人に頼まれて世話することになった少女が、先にテントで休んでいる。その子の所へ歩いていったのを確認し、ベートは不満を漏らした。
「カッ!死人が出るってぇ?ダンジョン外の雑魚魔物を狩ってるようなヌルいザコに俺らが負けるかよ!」
傲慢不遜、上から目線の尊大な自信家であるベートにとって、先ほどの言葉は気に入らない内容だった。
まるで戦えば負けると言われているようなことを言っていたが、長い戦いの経験と恩恵によってLv.5の高みに到った彼としては、戦う前から負ける心配をしていること自体が気に入らない。
確かに彼は強い。凶狼の異名は伊達ではなく、オラリオでも彼と一騎打ちで勝てる冒険者はそうはいないだろう。しかもこのファミリアは彼自身も認める実力者が所属しているのだ。負けるイメージなど湧かなかった。
だが、問題はそこではないことをリヴィエアは知っている。
「……果たしてぬるいのはどちらかな」
「あぁ!?ンだよリヴィエア!俺達が負けるってかぁ!?」
「そうではない。だが、我々が魔物を狩り慣れているとしたら向こうは『人の狩り方を知っている』んだ」
「人の狩り方……?それってアスタリスクとは関係なく戦略が凄いってこと?」
「ああ。そうでなければあの国はとっくに他の神に侵攻されてるよ。それをさせなかった『聖騎士』は間違いなく知将だ」
エタルニアは新興国である。そして、国とは得てして争いの中から生まれる事が多い。
かつて、とある理由からクリスタル正教と全面対立して戦争を行ったエタルニアは、騎士団を相手に常時優勢のままゆさぶりをかけて国家の独立を勝ち取った。詳細はあまり語られていないが、それは単純に強い戦士が正面から突っ込んだだけではありえない。
事実、エタルニア公国軍は最小限の損害で戦争を乗り越え、興国後の動乱を速やかに処理していった。
国とは戦争後に最も疲弊した状態を晒す。真正面からの戦争は兵や財を大きく消耗させ、国全体が疲
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