第一章 Your Hope
9.燻る者たち
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雰囲気だ。
確かに今までエタルニアやクリスタル正教へ攻める馬鹿なファミリアは存在したが、その度に死者を出さずに終わっている。そこまで深刻な状況になってるとは、彼女には思えなかった。
しかし現実では世界は大きく動いていた。
「ウチも知り合いから聞いてんけどな……どうも神の中に中立の立場の神を唆してアンチ・クリスタリズムの思想をバラ撒いとる阿呆がおるみたいなんや。過激派の神は殆どが正教を疎ましゅう思っとるし、実際アスタリスク持ちがオラリオ以外でも騒ぎを起こして関係はギスギスしとる……それに、エタルニアは特に軍事国家や。あそこはいつでも戦争できるし、最近は妙に周辺国への警戒が強い。向こうも予感しとるんやろうな……この後、何が起こるかを」
今までは精々複数のファミリアで徒党を組むとか、一国が勝手に仕掛ける程度の規模だったから問題はなかった。だが、アンチ・クリスタリズムというひとくくりの勢力が出来上がった今、次に仕掛ける時は戦争が起きる時だというのがロキの考えだった。
あの強欲で高慢ちきな神々は、間違いなく連盟での派兵を計画している筈だ。そして、エタルニアの軍事と政治を司るブレイブ元帥は敏い男だ。間違いなくそれを前提とした準備を進めているに違いない。
「やけど、2つの勢力が実際に接しとるんは山脈の影響でたった三カ所や。オラリオから見て東、余所の争いに興味ないド田舎国家のカルディスラ。西、カッカ火山の麓で正教が近隣の神とも上手く融和しとる中立エイゼンベルグ。そして………正教圏のド真ん前にして世界最大数の神を抱え込むウチらの町、オラリオ」
オラリオには全てがある。神もいるし人もいる、物資も金も影響力も、ひとつの都市のレベルには収まらない程の圧倒的戦力と経済力を内包している。その方針一つで国を傾けるなど、やろうと思えば簡単だろう。
つまり――この都市が「エタルニアと戦う」とただ一言宣言すれば、燻っていた炎は爆発的に燃え広がる。冬の山に放った炎はこの大陸全てを掻きたてる熱狂的な暴力へと変貌していくだろう。
「分かるか?この中で戦端が開かれるきっかけになるんは間違いなくオラリオや」
「なるほど、話が見えてきました」
ファミリア団長のフィンが納得したように頷いた。
「つまり、ロキ様はこの騒動でエタルニアの調査隊とアンチ・クリスタリズム派の調査隊がかち合って問題に発展するのを避けたかったのですね?もしここで死者が出れば国際問題は避けられない。それに、仮にかち合わなくてもヘタに急進的な神が調査に向かえば、ついでとばかりに人畜無害なカルディスラを実行支配しようとしかねない。そうなればやはり戦争の火種になってしまうから……だから、それを避けるために自ら動いたと」
「そゆコト。戦争なんて阿呆らしいわ。しかも下らん対抗心起こ
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