永久滞在のアルファ
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「さて、ちょっとなだめてくるよ」
俺は席を立ち、ちいさなまゆりを抱える。少し勢いは収まったが、まだ泣いている。
「よしよし、いい子だからな……まゆり、泣き止んだらアンマンマンを一緒に見ような、だから、泣き止めよー」
そう優しく耳元で言ってやる。すると、嘘のように泣くのをやめた。目先に何か面白いものがあるとぱっと元気になるのは、¨まゆり¨譲りかもしれない。言語はまだ分からないはずなのに面白い奴だ。
まゆりをだっこしていると、ふと昔のことを思い出す。
それは、8年前。未来ガジェット研究所という、ふざけたちいさなサークルが出来て間もない頃だ。まだラボメンが俺とまゆりだったある日のこと、まゆりが迷子をこのラボにつれてきた。年は4才くらい、母親とはぐれてしまったようだ。そこで母親が見つかるまでに俺たちが保護しようということになったが。
なにしろ泣くのである。ママママとギャーギャーわめき、俺が泣き止ませようとしても無駄で(今から思えば、鳳凰院凶真モードで脅しまくったからますます泣いてしまったのだろうが)、大変だった。
だけど、まゆりに抱き締められると不思議とその子は泣き止んだ。そしてまゆりの胸の中でぐっすりと寝てーー。
「っ……」
いけない。またまゆりのことを思い出してしまった。俺はこの子を抱き締めると、いつもまゆりのことを思い出してしまう。悲しくなってきてしまう。目頭が熱くなり涙が溢れそうになるが、唇を噛んでこらえる。
「あぅ……ぅう……うぇ……」
俺の腕の中にいる赤ん坊がじっと俺を見つめ、不安そうな表情を浮かべる。きっと俺は今、辛い顔をしているのだろう。俺は安心させるように作り笑いを浮かべた。
「ごめん……目にごみが入っただけだ。さ、ママのおっぱいでも飲もう」
俺はるかにまゆりを手渡し、速やかに部屋を出た。るかが胸を出すから、そして、これ以上この場にいたら、泣かずにはいられなくなるから。
「倫太郎さん……やっぱり、まゆりちゃんのこと、忘れられないんですね……」
るかの呟きが、俺の耳に届く。けれど、答えられない。逃げるようにして部屋のドアを開けて、二回の自分の部屋へと逃げ込んでいった。
情けなくて、最低だ。自分の娘が、大事な幼馴染みに似ているからといって逃げるなんて父親失格だ。
「まゆり……俺は、どうしたらいい……どうしたら、俺は……。普通に生きられるんだ……」
俺は天国にいる幼馴染みに声をかけた。それが決して許されないものであり、答えのないものだとしても。かけずにいられない。
今度こそ、瞼にたまった涙が頬を伝った。嗚咽が漏れていき、その場に膝まづく。やっぱり諦めちゃいけなかったのだろうか。それとも、これが代償だというのか。まゆりを殺した罰として、永遠の
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