永久滞在のアルファ
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から……」
「……そうか、3人だな……。女子会だし、顔を出しづらいからな……」
そう、現在のラボメンは5人だ。まゆりは死んだし、鈴羽は1975年に飛んでいってしまった。桐生萌郁はどこへ行ったかは知らないが、アイツは前の世界線でまゆりをさんざん殺してきたから知ったことじゃないし、もうラボメンに入れる気はない。俺も人のことは、言えた立場じゃないけれど。
「なあ、次に紅莉栖が帰ってくるのはいつなんだ?」
「分かりませんが、ボクに連絡をくれるらしいので……」
ちゅるちゅるとそうめんを吸い上げながら俺はそうかと頷いた。不意に俺はニュースを見たくなり、テレビをつける。民間放送のMHKがちょうどお昼のニュースを発表していた。中学生の万引きや、政治家の賄賂、殺人事件とかそういった小さなニュースが弾丸のように流れるだけで、たいしたニュースはない。あるとしたら、アトラクトフィールド理論が発表され始めているということだろうか。
アトラクトフィールド理論とは、世界線の収束の法則のことで、さんざん俺を苦しめてきた冷酷な理のこと。それが、つい最近に世間に知らしめられた。ここでも俺は因果律から外れたものとしての疎外感を感じる。世間の皆は時空を越えた経験はおろか、夢物語とすら思っている。俺も、こんな特殊な運命を背負いたくはなかった。
しかし次第に俺とるかは、この世界に溶け込むことが出来た。因果から外れてしまったけれど、だんだんと戻ってきている気がする。娘が出来て、静かに楽しく生活が出来るという、ごく普通の暮らしをしているのだ。俺は、愚かな神の仮面を被る必要はなくなった。観測者ぶって世界線を移動することもなくなった。それでいい。タイムトラベルとかもうどうでもいい。ただ、平和に暮らせればそれでいい。
「んぅ……んん……、おんぎゃああああああああーーっ!!!!」
飯を食っている最中に、ベビーベッドから盛大な泣き声が聞こえた。まゆりが起きて泣いてしまったのだろう。るかが率先して席を立ってあやそうとしたが俺が制した。
「え?」
「たまには俺がやるよ。いつも任せっぱなしじゃ申し訳ないからな」
「で、でもそんな……悪いですよ。それに……倫太郎さん、大丈夫なんですか?」
「俺を誰だと思っている。俺は狂気の……いや、なんでもない。大丈夫だよ」
つい、かつての中二病の台詞が出てしまう。
狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真。自分を偽り、まゆりのために演じ続けた愚かな道化の仮面だ。まゆりと小さな頃に見たアニメにて、高笑いをよくするマッドサイエンティストに憧れて俺が真似したんだ。
でも、もうその仮面を被る意味はない。そう思うと自然に中二病は引けていき、普通の男になった。今思えば、よくもあんな恥ずかしい台詞を言えたものだな。
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