暁 〜小説投稿サイト〜
流星のロックマン STARDUST BEGINS
精神の奥底
45 自分と向き合うこと
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いた本音を誰かに言えば、楽になれる。
自分の本音の詰まった曲を誰かに聴いてもらえば、抱えていたものを少しでも吐き出せた気になれたのだろう。
彩斗自身はスズカに聴いてもらえるだけで十分だったはずだが、予想もしないことにそれが世に出てしまい、そしてこれまた予想もしないことに多くの人々からの反響を呼んだ。
だが納得もいった。
ピアノの楽曲にしては少し違和感があるところがあったのは、スズカの手に渡った後のアレンジに彩斗が影響されたからだ。
ギターやベース、ドラムなどパートもピアノで表現しようとしているのだ。
だがそんなことを考えている間にも曲は一番の聴きどころと言うべき、サビの部分に差し掛かった。
スズカの声が聴こえてくるようだった。
疾走感は最高に達し、彩斗を取り囲む景色は次々と変わっていく。
そして休むまもなく、爽快な音楽が流れていき、気づけば約4分半程の演奏は全て終わっていた。

「……」

彩斗は一度、深呼吸をすると鍵盤蓋をゆっくりと閉じ、立ち上がった。

「今日は…これでおしまい。1曲だけの短い間だったけど、楽しめたかな?ご静聴をありがとう」

そう言って一度、深く礼をした。

「サイトくんはスゴイね。本当はこんなに色んな才能に恵まれて。きっといつか、皆、サイトくんの事をちゃんと分かってくれる日が来るよ」
「…だといいな」

彩斗の表情は演奏の前後で大分変わった。
演奏が自分の心を癒やしたのだろう。
だが反面、メリーの様子が僅かにおかしかった。
何か必死に抑えていたものが、溢れ出しそうになっているようだった。

「……」
「メリー?どうかしたの?...ックション!!!」

彩斗はメリーに声をかけようとした瞬間、大きなくしゃみをした。

「サイトくん…さっき雨で濡れたから…」
「全く…ちょっと待ってなさい。演奏料に風邪薬持ってきてあげるわ」
「随分と安いコンサートだったね。メリー?どうしたんだ?」
「いえ…ちょっと…」

メリーは掠れそうなくらい小さな声で何を言っているのか聞き取れなかった。
シンクロを抑えている彩斗にはまるで想像がつかないが、彩斗とアイリスが買い物に出かけている間のメリーの様子を見たハートレスにはすぐに理解できた。

「あと、お風呂に入ってらっしゃい、メリーと一緒に。2人仲良く3日近く風呂に入ってないんだから」
「え…?僕とメリーで?」
「ええ、風邪を移されると面倒だし、時間の短縮にもなるし」
「でも…」

彩斗は戸惑った。
もう何年もメリーとは一緒の風呂に入ったことはないのだ。
自分はいいとしても、メリーは嫌がるだろうと思っていた。

「いいわね?メリー?」
「…はい。行きましょう、兄さん」

メリーはそう言って彩斗の腕を引っ張った。

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