暁 〜小説投稿サイト〜
流星のロックマン STARDUST BEGINS
精神の奥底
45 自分と向き合うこと
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秋の夜の大雨は傘を忘れた人間の体温を無慈悲に奪う。
人々は家路に急ぎ、人工的で不愉快なノイズを抑制し、ある種の沈黙をもたらす中、彩斗とアイリスは両手いっぱいの荷物と共に帰ってきた。
家の門や庭に仕掛けられている多くの監視カメラやセンサーが2人を捕らえ、ちょうど玄関の前に立ったところでハートレスがドアを開ける。
これは疲れ切っているはずの彩斗への気遣いではなく、スターダストを長時間使い続けて力が残存している彩斗にドアを破壊されたくないという気持ちからの行動だった。

「思ったより遅かったわね」
「雨に降られてて、少し雨宿りしてたんだ。タオルか何かくれないか」
「ほら」

ハートレスは面倒臭そうに彩斗とアイリスにタオルを投げ渡す。
アイリスはコピーロイドが精巧に再現したその亜麻色の髪の毛に滴る雨水を拭き取る。
だが反面、彩斗は若干気味の悪さを覚えていた。

「タオルをくれと言った僕が言うのもアレだけど、言われる前から用意してるなんて君らしくないね。明日は雨どころか雪だね」
「ずぶ濡れで入ってこられて嬉しい家主がいるわけないでしょう?それに用意するように言ったのは私じゃないもの」

「兄さん、アイリスさん…」

「!?メリー…」

上の階からはメリーが見下ろしていた。
彩斗とはタオルを放り投げ、靴を無理やり脱ぐと螺旋階段を駆け上がる。

「良かった!目を覚ましたんだ!」
「えぇ!心配お掛けしてスミマセンでした…でもお陰でこの通りです」

自然とメリーは彩斗の胸に飛び込み、彩斗はそれを受け止める。
互いに僅かとはいえ、血の繋がった唯一の肉親であり、家族だ。
それを見ていたアイリスもハートレスにもその感動と安心は容易に想像でき、心温まる場面だった。
だがハートレスはそれをすぐに流し、アイリスの方に寄って小声で話し掛ける。

「どうだった?シンクロナイザーの様子は?」
「本人は死ぬつもりじゃないし、死ぬことに対しても怖いと口では言ってるけど、反面、言ってることとやってることは全く違う」
「……」
「本人も薄々気づいているけど、表面上は必死に怖かったし、死ぬのだって怖いと必死に装ってるだけ…自分は正常なんだって必死に思い込もうとしてるっていう感じがしたっていうのが、率直なところ」
「痛みに関しては?」
「…まるで感じなかったと」
「悪い冗談だわ。普通、人間は攻撃を受ければ痛かろうと痛くなかろうと自然と身を守る為の行動をとろうとするものよ。あんなロボットみたいな戦い方、できるわけない」

ハートレスとアイリスは彩斗の身体、そして意識の中で恐ろしいことが起こっていると実感した。
先程の公園での会話からアイリスは彩斗が嘘をついているとまでは思わなかったが、少なくとも口で言っているだけ、自分はそう思っ
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