第19話
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本当に手を貸してもらえるとは思っていなかった。
付き人である事から追いやられた後も、彼女達を思って黄巾に身を寄せていた。
しかし自分に助ける知恵もなければ力も無かった。やがて食糧難になり泣く泣くこの南皮に辿り着いたのだ。そして満足な食を口にし、しばらく安定した生活が約束されると、男に再び彼女達を助けたいと言う思いが芽生えた。
だからこそ文字通り藁にも縋る思いで、むしろ断られれば踏ん切りもつくと自分に言い聞かせ進言したのだ。
一時期は黄巾に所属していた自分の言葉を、漢の忠臣と呼ばれる袁家が信じると誰が思うだろうか第三者から見れば唯の旅芸人である彼女達のために、勢いがなくなったとは言え二十万近い勢力に立ち向かうと誰が思うだろうか……
「今のご時勢、低い身分で太守に声を掛けるのは命がけである。我は己の命を賭した男の言を疑えるほど器用ではない」
「……」
唯でさえ命の価値が低い時代である。袁紹の言うとおり男の進言は自暴自棄になりながらも命がけだった。
「安心せよ、我が袁家には出来ない事の方が少ないからな! フハハハハハー!!」
「う……うぅ」
まるで男の不安を払い除ける様に豪快な笑う袁紹。彼のその言葉と姿は男にとって、 暗雲に差し込む一筋の光そのものであった――
………
……
…
数ヵ月後、各地で散り散りになった黄巾賊を討伐しながら、各諸侯は広宗こうそうに集結していた。
広宗に篭城している黄巾賊は最後の最大勢力であり、その中に張角も居ると思われる。
手柄を立てようと集まった諸侯の一つである孫呉そしてその長女である孫策は、広宗に向かってくる軍旗を見つめ唖然としていた。
「……ねぇ冥琳」
「なんだ?」
「貴方、袁家は張角討伐に動かないって言ったわよね?」
「言ったな」
孫策に真名で呼ばれた女性――周瑜は眼鏡の位置を直しながら肯定する。
「『袁』の一文字に『趙』『呂』『程』の軍旗、袁家当主である袁紹殿に間違いあるまい」
「普通に来てるじゃないのよー!?」
冷静な周瑜とは違い孫策は珍しく頭を抱えた。それも無理は無い。独立を目指す彼女達にとって張角の首は喉から手が出るほど欲しい手柄だ。
黄巾の乱は自分達の名を売るのに相応しい大舞台だった。しかし、黄巾討伐に動く前に袁紹の策が始動し黄巾賊は瞬く間に勢いを失なってしまう。故に自分達にできたのは残党のような黄巾賊の討伐と、南皮に向かう『難民』の道案内ぐらいであった。
「ただでさえ好敵手が多いのに袁家も参戦だなんて……、嫌になるわね」
今まで碌な手柄を立てられなかったのも相まって、孫策の機嫌は悪くなる一方だ。
そんな彼女に周瑜は苦笑しながら口を開いた。
「
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