第19話
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では無いです!」
「歌と踊りを天下に轟かせる……といった所か」
「はい! 地和ちゃんは間違いなくそのつもりで言ったはずです!!……ですが――」
彼女の言葉と共に会場は騒然としだした。観客達は互いに顔を合わせ何かを話している。
その様子に三姉妹が怪訝に思っていると――
――天下……漢王朝を滅ぼすんだ!
――天和ちゃん達がいればオラ達は無敵だ!
――さっそく隣町にも知らせてくるだよ
――俺も行くぞ!!
『あ、あんた達、何を言ってるの!?』
『皆さん、落ち着いて下さい!』
『た、大変〜』
三姉妹の制止も空しく、観客達の勢いが止まることはなかった――
「漢王朝打倒を掲げた者達に付き人を追い出され、行き場の無くなった自分はここに流れて来ました」
「……お主はその狂気に身をゆだねようとは思わなかったのか?」
「先ほども申し通り、彼女達の真意はわかっていましたから」
「……」
「じゃあ、黄巾の長の張角って……」
「張角は天和ちゃんの名です。彼女達は皆に真名で呼ばせているので」
となるとのこった姉妹の二人が張宝と張梁だろう。一時期は五十万にも及ぶ勢力になった黄巾の長が、まさかただの旅芸人だとは――、
「その後、彼女達は説得を試みたか?」
「そ、それは勿論、彼女達が心配で黄巾に身を寄せていた時に何度も耳にしました。ですが……」
観客達が落ち着いて彼女達の話しに耳を傾けた頃には、黄巾は手がつけられないほどに拡大していた。彼女達を知る者の方が少なくなり、黄巾の長だと認識されず元の旅芸人として黄巾にいるという。
「このまま黄巾に居れば、いずれ官軍に討伐されてしまいます! お願いします! 彼女達を助けてください!!」
「……」
大陸の疲弊は最高潮に達していた。彼女達は体よく祭り上げられただけで、放っておいても農民達は感情を爆発させたに違いない。……しかし彼女達が黄巾の乱を起こしたのも又、事実である。
「自分は――彼女達に救われたんです……」
説明を終えた男はポツポツと心情を語り始める。凶作、疫病、重税、度重なる不幸に男を含め彼の村の面々は我慢の限界だった。村人達で集まり役人を襲う計画を立てたのも一度や二度では無いという。
そこへ彼女達が現れた。現在のように完成度の高くない歌と踊りだったが、娯楽の無い自分達を癒すには十分だった。
以来仕事に精を出し。貧しくも充実した毎日を送ることが出来た。
彼女達が現れなければ黄巾が出来る前に役人を襲い。自分達は処刑されていたか、良くても賊に身を堕としていただろう。
「彼女達が自分を救ってくれたように今度は彼女達を助けてあげたい。しかし自分には何の力もございま
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