case.2 山中にて
epilogue 9.2.am10:55
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テーブルに置いてあったケータイが鳴っている。
俺は今、とある街へ演奏旅行に来ていた。単独でのコンサートを開いて欲しいとの要望で招かれたのだ。
まぁ、助手として田邊もついてきてはいるが…。
俺は鳴り止まないケータイを掴み取り、仕方なくそれに出たのだった。
「もしもし…」
「元気か?」
不機嫌に出た俺の耳に、聞き覚えのある声が飛び込んできたので、俺は一気に眠気が吹き飛んだ。
「小林、一体どうしたんだ!?」
それは小林からのものだった。
あの奇妙なバスを見た翌日、俺は何も分からないまま出発しなくてはならなかったんだ。このコンサートのためなんだがな。
「相変わらず、寝覚めが悪いようだな?さて、話はこの前のことなんだが、調べて分かったことが幾つかあるんだ。知りたいだろ?」
「そんな勿体つけないで早く言えって…!」
俺は小林を急かした。
目の前には、田邊がムスッとした顔で俺を見ている。田邊も相当寝覚めが悪いのだ…。
そんな田邊に事情を説明すると、なぜか目を輝かせて「後で教えて下さいよ!」と、言ってきたのだった。
こいつも案外“物好き”だな…。
この知らせで分かったことは三つだった。
まず、事故の多発していた場所なんだが、およそ三百年ほど前まで処刑場として使われていたらしい。
そんな場所だから誰も寄り付かず、当時、大地主だった小林の本家の先祖が高僧を呼び、その土地を浄化してもらったそうだ。
これが事実だとしたら…失敗と言えるな。
第二に、これは分かったと言うよりもむしろ、分からなくなった原因なんだが、この村の記録を残していた寺だが、なんと三回も火事で焼け落ちているのだ。無論、資料も焼失している。どんなに古いものでも、江戸末期からのもので、国宝級のものだけは鎌倉時代まで遡ることが出来るらしい。
住民よりも余程大切らしいな…。
最後だが、最初期に村を開いた者達の墓なんだが…分からないのだそうだ。
先祖代々と言うが、一番古い墓でも江戸時代に入ってからのものだった。
では、あの室町時代から残る稲荷の社は…何なんだろうか?長年の風雪に耐えて、よく残ったものだと思う…。
だが、これらをどう説明すればいいのだろうか?
村を出た時に墓石を運び出した?いや、それはあり得ない。当時の村は、ある種の閉鎖世界だ。それを捨てて出ていくことなんて考えられなし、第一…重い墓石を全て持ち出すなんて出来ようもなかったはずだ…。
では、どうして先人の墓標は存在していないのだ?それも、その跡すら見つけられないなんて…。
その上、土地の一部が処刑場になっていたことも気になる。
小林はそれだけ言い終えると、「じゃ、これに懲りずにまた遊びに来いよな。」と言って、電話を切ってしまったのだった。
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