6部分:第六章
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よりも穏やかなものを感じませんか。入り口だけだというのに」
「そうですね。こんなことは今までありませんでした」
グレゴリオはそう述べる。
「私もそれなりに色々な教会を巡ってきましたが」
「罠でしょうか」
ベネヴィクトはふと言ってきた。
「これは若しかすると」
「アレクセイ神父の」
「有り得えるのでは。悪魔はその牙も爪も隠すものですから」
「それではこれこそがアレクセイ神父が死して尚生きている証」
彼等はそう思った。
「ならば。ベネヴィクトさん」
「ええ」
二人は顔を見合わせて頷き合う。
「用心して参りましょう」
「それでは二人で」
肩を寄せ合うようにして先に進み扉をゆっくりと開ける。そうして扉の中を覗き込むとそこは薄暗い礼拝堂であった。ステンドガラスと十字架、礼拝堂が奥に見える。十字架の上にいる主は何も語らずにそこにかけられているだけだった。
「ようこそ」
二人が扉を開けたその時に声がした。
「教会に来られました。何の御用件でしょうか」
「アレクセイ神父でしょうか」
グレゴリオが最初に入り彼に問うた。
「おられますか?」
すぐにベネヴィクトが横に来て二人並ぶ。扉に完全に背をつけて左右をそれぞれ見る。彼等は本能的に死角を見せないようにしていたのである。
「おられたら返事を御願いします」
「私がベネヴィクトです」
声だけがした。しかし姿は見えない。
「何の御用でしょうか」
「私達はローマから派遣されてきました」
今度はベネヴィクトが言ってきた。やはり隙は見せてはいない。彼は格闘技の類は一切知らない学究の徒であるがここでも本能的にそうしていたのだ。これは無意識のうちでの動きであった。
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