5部分:第五章
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第五章
「前の戦争で。隣の街と派手にやり合いました」
「はい」
二人は神妙な顔でその言葉を聞く。わかってはいたが当事者の言葉は耳にするだけでかなり辛いものがある。だからついついそうした顔になってしまったのだ。
「それで多くの血が流れました。私の亭主もまた」
「お亡くなりになられましたか」
「左様で」
ここで声がかなり沈んでしまっていた。
「あの教会にいた神父様は私達の争いを深く悲しまれ」
「そしてどうなったのですか?」
「私達の間に入られて。それで」
「何と」
グレゴリオもベネヴィクトもそれを聞いて言葉を失った。まさかそこまでだったとは思わなかったのだ。それは言葉を失うに充分であった。
「左様でしたか」
「はい」
老婆は悲しい顔でそう述べてきた。
「おわかりになられましたか。何があったのか」
「わかりました」
ベネヴィクトは頭を垂れて答えてきた。グレゴリオも同じである。
「悲しいことです」
「そしてその神父の御名前は確か」
グレゴリオは今度は老婆にそれを問うた。
「アレクシス神父でしたね」
「そうです、その方です」
老婆はその問いにまた答えてきた。
「立派な方でした」
「そうです。私達はその方の後を受ける為にここに来ました」
そうして老婆に言う。
「そのアレクシス神父の志を受け継ぐ為に」
「ここに」
「それはいいことです。しかし」
だが老婆はここで顔を暗くさせてきた。
「それは」
「どうかされたのですか?」
「一体何が」
「神父様はまだ生きておられるのです」
老婆はそう言うのだ。
「生きている!?まさか」
「いや、ベネヴィクトさん」
ここでグレゴリオの顔が剣呑なものになった。彼はここであることを察したのである。
「若しかしたらこれは」
「?何かあるのですか?」
ベネヴィクトは彼の言葉を聞いて怪訝な顔を見せてきた。
「一体何が」
「ここでは何です」
しかし彼はここでは話そうとはしなかった。何かを察した顔であった。
「後で」
「一体何ですか?」
ベネヴィクトにはまだ何のことかわからなかった。彼はイタリア生まれでありバルカン半島のことには疎い。だからどうしても知らないことがあったのだ。
「アレクシス神父が生きているなどと」
「それがあるのです」
彼はまた言う。
「そのお話は後で」
「はあ」
「それではまた」
ベネヴィクトに述べた後で老婆に顔を戻す。そうして挨拶をして別れるのであった。
道に出るとベネヴィクトは早速グレゴリオに顔を向けて来た。そして怪訝な顔で問うのであった。
「あの、グレゴリオさん」
「わかっています」
グレゴリオは前を見たまま静かにベネヴィクトに答えてきた。
「まだアレクシス神父が生きてい
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