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三人の神父
5部分:第五章
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るかどうかですね」
「そんなことは有り得ません」
 彼は顔を顰めさせて述べてきた。
「死んだ者が生き返るなぞ。そんなことが」
「イタリアではそうですか」
 ベネヴィクトはそれを聞いて顔を顰めさせてきた。彼にはどうしてもわからない話だった。
「仰る意味がよくわかりませんが」
「ここはスラブです」
 彼は言うのだった。
「死者が蘇り生者を襲うことがあるのです」
「何ですか、それは」
 ベネヴィクトにはわからないことばかりだった。それは彼の知らない世界であった。
「一体何が何なのか」
「吸血鬼です」
 グレゴリオは答えた。
「スラブでは死した者は時として吸血鬼となり蘇り生きる者の血を啜ることがあるのです」
「馬鹿な」
 ベネヴィクトはそれを聞いて顔を顰めさせる。
「そんなことがある筈が」
「本質的に違う世界なのです」
 彼はまた述べてきた。
「イタリアとは」
「吸血鬼ですか」
 ベネヴィクトはその不吉な名を聞いてまた顔を暗くさせた。
「それではアレクセイ神父もまた」
「吸血鬼にになる場合は生前に恨みや悲しみを残して死んだ場合なのです」
 そうベネヴィクトに述べる。
「アレクセイ神父もそうならば」
 グレゴリオ神父はきっと目を強くさせてきた。その目は覚悟を決めた目であった。
「払わなければなりません」
「払う・・・・・・ですか」
「ベネヴィクトさん」
 前を見据えたままベネヴィクトに声をかけてきた。
「何ですか?」
「覚悟を決めて下さい」
「覚悟ですか」
「頼りは十字架と聖書です」
 神に仕える者ならば誰もが持っているもの、それを今出してきた。
「その二つと信仰が頼りです」
「まさかとは思いますが魔を払うのですか?」
「その通りです」
 何故意を決した顔になったのか、ようやくわかった。それは彼にも及んでいた。
「いいですね。今ここで」
「わかりました。それでは」
 ベネヴィクトもまた意を決した顔になった。彼もまた神に仕える者だ。信仰も覚悟もあった。その二つも持って今教会に向かうのであった。

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