4部分:第四章
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ウンであった。いや、ゴーストタウンそのものであった。
「ではどうして」
「お待ち下さい」
ここで一軒の居酒屋に気付いた。
「あそこでお話を聞いてみますか」
「そうですね。お腹も空いてきたことですし」
ベネヴィクトはここで俗世的なことを口にしてきた。
「中に誰かがおられればですが」
「おられることを祈りましょう」
グレゴリオもいささか悲観的にこう言う。
「それでは」
「ええ」
こうして二人は店に向かった。扉は開いていた。従って店の中も薄暗いながらちゃんと机や椅子があった。そこには一人の老婆がいた。
「お坊さんですか」
「はい」
「そうですが」
二人は店の隅で蹲るようにして座っている老婆に挨拶をして述べてきた。
「ワインと食べ物を頂きたいのですが」
「宜しいでしょうか」
「ええ、いいですよ」
老婆はその言葉にゆっくりと頷いてきた。そうして一旦立ち上がり店の奥からハムと黒パン、そして赤ワインを出してきた。それを店のテーブルの一つに座る二人に出してきた。
「粗末なものですが」
「いえ、有り難い神の御恵みです」
「喜んで受け取らせて頂きます」
二人の信仰はかなり真面目なのものだった。だからここに来るまででもかなり悩んでいたのだ。今もその信仰を述べた。そうして食事をはじめた。
食事をしながら。さりげなく老婆に問うた。
「ところでお婆さん」
問うたのはベネヴィクトであった。あらかじめ学んでいたたどたどしさの残るクロアチア語で老婆に声をかける。
「ここの街に教会があった筈ですが」
「ああ、カトリックのですね」
「そうです。それは何処にあるでしょうか」
ワインを飲んだ後で問う。そのうえで返事を待つ。
「この街にありますよね」
「ええ、あります」
老婆はその言葉に頷いてきた。二人はそれを聞いてまずは安堵した。
「この店を左に曲がってまっすぐに行くと暫くして右手に大きな十字架の教会が」
「あるのですね」
「そうです。ただ」
ここで老婆は顔を暗くさせてきた。
「ただ?何か」
「お坊さん方はどうしてここに来られたのですか?こんな何もない街に」
「それが神に与えられた仕事だからです」
今度はグレゴリオが答えてきた。
「その教会で務めるようにと。それで」
「来られたのですね」
「はい」
グレゴリオは老婆の言葉に静かに答えてきた。
「その通りです。それで来たのですが」
「そうだったのですか。それは」
感心したような言葉ではなかった。苦労を哀れむこうな言葉であった。
「あそこへ行かれるとは」
「何かあるのですか?」
老婆の口調のその微妙な響きに気付いたベネヴィクトは彼女に問うた。
「教会に」
「あるのです、それが」
老婆は今度は疲れ切ったような声を出
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