第6章 流されて異界
第119話 有希
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言う訳ではない。まして、無駄な贅肉が付いて居る訳でもない。
俺と違い、妙に人を睨むような表情をする訳でもない人好きのする優しげな容貌。ただ、顔のパーツひとつひとつは非常に整っている。この青年が俺の暮らして居た世界と同じ立ち位置に存在する人物だとすると、今年の春に徳島の高校……タバサに召喚される以前に俺が通って居た高校を卒業して、今年の春から東京の大学に進学したはずの人物。
ただ、彼と同じで東京の大学に進学したはずの天野瑞希さんが、何故か朝倉涼子の従姉役で西宮に在住している事から考えると、彼も――
「こっちの仕事は終わったから、勝負は出来ると思うよ」
南原さん、と朝倉さんに呼ばれた男性が更に続けた。
そう、彼の名前は南原和也。水晶宮に所属する術者。当代の天機星を務める人物。
天機星とは天?星三十六星の中の第三席。水滸伝の英傑の中で言えば智多星呉用。字は学究。道号は加亮と言う人物。まぁ、これでもか、と言うぐらい軍師として持ち上げられているのは智多で、学究で、加亮と言うトコロからも分かると思う。
ただ、以前に暮らしていた世界では確かに俺と和也さんは顔見知りでしたが、この長門有希が暮らしていた世界では、俺と和也さんは初見の相手のはずなのですが……。
妙に馴れ馴れしい態度に多少の違和感を覚えながらも、それでも――
「有希、勝負だ。サインを頼む」
【最後にストレート勝負を挑む組立で】
和也さんが仕事が終わったと言うのなら、俺たちの側が不利に成り続ける状態は解除されたと言う事。天の時、地の利、人の和すべてこちら側が掌握出来たのなら、負ける可能性はかなり低くなったと言う事。
少なくともこの空間内で歴史の改竄を一瞬の内に為せるとは思えないので、野球の実力で勝負が出来るようになったはず。
【アウトロー。ストライクゾーンぎりぎりに落ちるツーシーム】
抑揚の少ない、非常に平坦な口調。ただ現実の声に出すよりも【念話】で話す事の方が多く、更に言うと、【念話】を使用する時の方が彼女は饒舌となる。
もっとも、この要求はかなり難しい要求。小さいとは言え、俺のツーシームは間違いなく変化球。変化しながらボールゾーンに落ちても構わない、と言うのなら思いっきり腕を振ってボールに回転を加え、変化の幅を大きく取る事も可能なのですが、ストライクゾーンぎりぎりと言う事はそれが出来ない。
ただ、そうかと言って置きに行った変化球では単なる棒球。有希が打って来ないと判断したのなら、真ん中辺りに変化球を要求して来る。わざわざストライクゾーンぎりぎりを要求して来たと言う事は――
自らの心の中でのみ愚痴をこぼしながら、それでも彼女の指
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