第6章 流されて異界
第119話 有希
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る訳ではないので確かな事は言えないけど、それでも塁間を三秒台と言うプロ野球でも俊足と言われる選手たちでさえ追い付けないであろう、と言う速力で一塁から一気に二塁、三塁を回ってホームへ。
これで十二対十五。終に三点差。
但し、有希の足が常識的な俊足と言うレベルで納まらなかった事がコチラの不利に働いた。ホームを目指す有希を刺す事を諦めた九組は、有希に続いてサードを欲張ったさつきを三塁で刺す事に主眼に置いた中継を行い……。
結果、さつきは三遊間に挟まれて無念のタッチアウト。ただ、有希のホームインは認められた。
☆★☆★☆
そうして、三点差で始まった九回の表。
バッターボックスの横には、この回の先頭打者、九組の三番にして最強……最凶のバッターが軽くスイングを繰り返している。
ここは……。
「有希――」
素直に一塁に歩いて貰う。そう判断した俺。
しかし――
「言って置くけど、不戦敗は許さないわよ」
現在の状況が理解出来ているのか非常に心配な我らがチームのキャプテン様が、俺の作戦を完全否定するような命令を出して来る。
いや、有希に呼び掛けた事により気付かれた可能性が高いですか。
ただ……。
少し顔を顰めながら、振り返る俺。その視線の先には――
とても整った顔立ち。但し、所詮は未だ高校一年生であるが故に、大人の女性としての色艶を備えるにはあと数年を要するでしょう。ただ、栴檀は双葉より芳し、と言う言葉は今現在の彼女の為にある言葉なのかも知れない、そう感じさせるに相応しい容姿を持つ少女。
「しかし、な、ハルヒ。場面は九回表。相手の先頭打者は強打の三番。ここは勝負を避けるのが定石やろうが」
前の打席でホームランを打たれた相手。まして、因果律を歪め、瞬時に歴史を書き換えて来る相手でもある。こんなヤツに正面から当たっても砕けるのがオチ。
それに引き替え、続く四番は途中出場の控え。五番も俺がマウンドに立ってからは、二打席凡退。その時に実際、対戦した感想から言わせて貰うと、このレベルの選手に打たれる可能性は非常に低いと言う事。
三番を歩かせれば後は九番までの間で押さえれば良いだけ、ですから。
しかし――
何故か立ち上がろうとはしない有希。多分、彼女も敬遠には反対だ、と言う事だと思う。
腕を胸の前で組みながら、それ見た事か、と言う表情で俺を見つめるハルヒ。
そうして、
「どうせあんたの事だから、奥の手のひとつやふたつ、用意してあるのでしょう」
この試合は決勝戦なんだから、ここで出し惜しみしても意味がないじゃないの。
黙って立って居たら清楚で可憐。そう言う形容詞を付けても問題ないのだが、一度口を開くと憎
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