第6章 流されて異界
第119話 有希
[6/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
産物である可能性の方が高く、信用に値する物ではない。
そんなクダラナイ物に何時までも振り回されてどうする。まして、俺の過去を紐解けば、彼女に知られたくない過去など山のように出て来る。
セットポジションから投げ込まれる三球目。足を上げた瞬間、ヤツの周囲に得体の知れない何かが発生。
それはまるで黒い霧。何も無かったはずの空間に行き成り発生した黒い霧の如きモノ。それは正に魔法……あらゆる物理現象を嘲笑う行為であった。
その黒き何か。ただただ黒き霧の如く自称リチャードを包み隠すだけの存在であった何かが次の瞬間、有希に向かって一直線に奔り始めた。その間に存在する、すべての小さき精霊たちを食い散らかし、自らの呪力へと変えながら。
しかし、その瞬間、別の何かも変わった。
そう、有希の弛緩していた小さな身体に精気が復活したのだ。短い、そして毛先の整っていないボブカットが微かに揺れたのは、俺に対して小さく首肯いてくれた証。
僅かな時間。一秒を何等分にも分割した刹那の時間の後、十八メートルの距離をひた走り、終に黒い何かが有希を取り囲む。
そして、周囲の精霊もろとも有希を呑み込んで仕舞ったのだ!
一瞬、俺の視界からは完全に黒き霧に覆われ、姿を消して仕舞う有希。
しかし――
しかし、それがどうした。術に耐性のない一般人ならいざ知らず、今の有希がその程度の物でどうこう出来るとも思えない。
俺の中から何かが猛烈な勢いで何処かに流れて行くのが分かる。高い所から低い所へと自然と流れて行くように、霊道を通じて有希へと流れて行く龍気。
黒き何か……それはおそらく悪意。それ自体に有希をどうこう出来るほどの力はない。しかし、それは全ての悪しき物の始まり。長く晒され、触れ続けて居れば間違いなく何らかの不都合が生じて来る危険な代物。
刹那、それまで無限の増殖を続けるかに思えた黒き霧の内部から、何かが発生した。
それは、有希が発生させた不可視の壁。闇が支配する領域を押し返し、徐々に己が領域を拡大して行く不可視の壁。
闇と無色透明の壁が拮抗する点で淡い七色の光輝が発生する。それは、有希の術により活性化した精霊の輝き。
そして――
黒い霧の向こう側から飛び出して来た白球。
それまでの打席と同じように、ただ担がれているだけで有ったバットがゆっくりと振り抜かれ――
☆★☆★☆
十対十五。
その後、まるで気落ちしたかのような自称リチャードくんを相手に、五番万結、六番さつきが連打でツーアウト一塁・二塁と攻め立てたのですが、弓月さんが九組サードの好守に阻まれて凡退。結局、六回裏の攻撃はこの二点で終了。
七回の表。俺は九組の六・七・八番をあっさりと三者凡退に。審判が真面に判定
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ