第6章 流されて異界
第119話 有希
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かを知らないアイツとの間で。
キャッチャーから出されるサインを覗き込んで居る自称リチャードくんに、そんな台詞を発している様子はない。口は嫌味な形で歪み、瞳も少し眠そうに感じる程度。
しかし――
「人形は人形らしく命じられた事だけをやって居たら良い。そうじゃないのか、ええ、長門さんよ!」
強い断定口調。しかし、何故か陰々滅々と響く声。
「有希――」
しかし、これ以上、このクダラナイ精神汚染を続けさせる訳には行かない。何故、この異様な空間に俺を取り込んだのか、その理由は分からない。
……が、しかし、それでも――
その時、俺の呼び掛けに一番驚いたのは誰であったのだろうか。一塁側のベンチに座るSOS団のメンバーたちで有ったのだろうか。それとも、冷たい風が吹く中、更に圧倒的に不利な状況の試合を、それでも応援し続けてくれているクラスメイトたちで有っただろうか。
それとも――
「俺が求めて居る相手を知らないオマエではないはずやな」
多くの人間が集まっている場で呼ばれた名前に、驚きの視線を向けて来る彼女。彼女の名前には、俺の真名が含まれている。故に、俺が彼女の名前を呼ぶ時、其処には必ず龍気が混じり、世界に何らかの影響を与える。
ただ、そうで有るが故に、俺は彼女の名前を人前で無暗に呼ぶ事が出来ない。
本来ならば――
「ずっと俺の相棒を務めて来たオマエならば」
俺が求めている相手。それは黙って見つめ合う相手などではない。互いの過去――傷をなめ合う相手でもない。
確かに彼女の過去に興味がない訳ではない。但し、其処には何もない事も判って居る。
彼女が誕生したのは一九九九年七月七日の夜。この世界の涼宮ハルヒと言う少女と、異世界から訪れた名付けざられし者との接触によって誕生した高次元意識体。情報統合思念体が情報を収集する為に作成した人工生命体。
それが彼女、長門有希。
そして、彼女の意識――心や記憶の部分は二〇〇二年七月七日の夜から、彼女が誕生した一九九九年七月七日の夜へと時間旅行を繰り返し、誕生直後の頭脳へと記憶を書き込み続けられた。
しかし、それは全て欺瞞。そもそも、銀河誕生と共に発生した、と自称していた情報統合思念体自身がハルヒと名付けざられし者との接触により発生した存在。まして、その際に発生した名称不詳の人物。有希の記憶と称していた本の栞を持って一九九九年七月七日の夜にこの世界に訪れたキョンと呼称されていた本名不詳の存在も、『情報爆発』と彼、彼女らが呼ぶ事件が起こらなかったこの世界から消えた以上、その人物も同じように一九九九年七月七日の夜に、この世界に突如出現した異世界からの侵略者だと考える方が妥当。
そんな怪しげな存在が持って来た『有希の記憶』など悪意の
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